猫の手を借りた結果

八五三(はちごさん)

情報は鮮度が命。

『猫。が、直々じきじきに来るとは』

『フフフ。帝国の犬だけに、吠える、わね』

『笑えん。冗談だ』

『笑える冗談が、よかった? うーん。どの話にしようかしら、あれ、それとも、これ。が、いいかしら』

『冗談はさておき――引っ掻き回し、よって。まったく』

『猫だけに、なんちゃって!』

『おもしろく、ない、な』

『ごめんにゃーさーい』

『…………、…………』

『そんなコワイ顔しないで、よ。ほんと。冗談、通じない、わね』

『汚れ仕事に関して、こちらは一向に構わん。が、派手にやり過ぎだ。我らは、亡霊――存在しないからこその脅威となる』

貴方あなたの“存在しないからこその脅威”って、意見は尊重するけど。自惚うぬぼれた自信家たちに、正しく帝国の実力を把握させおくことも。脅威の一つで、なくて』




「情報、や!!」

「耳が痛い、よ。そんなに大きな声で話さなくても、聞こえてるよ。最近の通信機器は、ノイズキャンセル機能が搭載してあるから。バカみたいに大きな声で話さなくても、十分に聞こえるから」

「テメェー、ふざけるな! 裏切りやがって!!」

「だから! 大きな声で話さ――あれ、ボクは裏切ってないよ。景気のいいお客さまに、情報を売っただけ」

「それを裏切りって言うだよ、ゴシップやろう! お前が売った情報のせいで。拉致った女は奪い返される、わ!! 俺の部下は殺される、わ!!!」

「五人、だけだろ。死んだの」

「――ぇ」

「勘違いしているのは、君たちだよ」

「か、かんちがい」

「情報は生き物で、鮮度が命なの。だから、新鮮なうちに売っちゃわないといけないの」

「な、なにをイってる」

「なに、か。聞こえない?」

「聞こえる、なに? が。 ナ、ニ、ガ、聞こえるんだ――――じょーぉーほーぉーやーぁー!!!!!」

「犬の遠吠え」




「ぅにゃ~ん」

「おかえりー、バステトさん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

猫の手を借りた結果 八五三(はちごさん) @futatsume358

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ