猫の手を借りてみた結果

アキノリ@pokkey11.1

逆転する世界

そもそも俺、佐藤裕(さとうゆう)はモテない。

そしてモテる様な顔をしてない。

成績もイマイチで運動神経もそこそこ。

つまり俺は秀でるものが何も無い。

そんなモブで馬鹿野郎な感じの俺だが惚れている女子が居る。


中谷星(なかたにほし)。

俺のクラスの美少女である。

学校1の美少女と言っても過言では無いと思う。

中谷は前髪を1箇所結っていて.....仕草がとても可愛らしい。

だから好きであるのだがまあモブが触れていい聖域では無いので.....この恋はいつか告白をという事にした、のだが。


何というかそのまま高校生活は3年も過ぎ卒業式が間近になってしまった。

俺は愕然としながら日々を過ごしているが。

中谷への告白は絶えない。

その為に焦りを感じていた。

そんな事もあり俺は幼馴染の同級生の女子の八幡空(やはたくう)に放課後の教室で相談する。


「ふむ。我に相談とな?」


「そうだな。相談だ。どうしたら女子と付き合えるか.....一緒に考えてほしい」


「ふむ。分かった」


空は簡単に言えば褐色の肌をしている。

顔立ちは整っている。

褐色の肌の美少女だと思う。

問題としては喋り方がジジ臭い。


俺はそんな空に相談するのもアレと思ったが。

でも時間が無い。

焦っている。


「我に相談しても意味無いぞ。何で我」


「お前こそ最後の頼みの綱なんだ。頼むぜ相棒」


「ふむ.....そうであるか」


「何でそこで赤面するんだ」


「な、何でもない」


空は赤面しながら、そ。そうか、と言いながら。

次にかなり落ち込んだ様子で、じゃあ我も頑張ろう、と言った。

何だコイツ?、と思いながら見ていると。

先ずは何としてもデートに誘ってみると良いぞ、と言ってくる。


「我は幸いにも星と仲が良い。裕。貴公にデートの機会を授けようぞ」


「うおぉ!マジか!?有難う!」


「その.....代わりと言っては何だが我に協力せよ」


「何でもするぞ!」


「な、何でも.....」


ウヘヘ、と言いながら頬を朱に染める空。

何だコイツ?、と思いながら見る。

すると空は、じゃあ我と戦国武将の博物館に行くのじゃ、と喋った。

ああ.....コイツが好きな真田幸村の甲冑のレプリカとかあるしな。


「分かった。お前と一緒に付き合うよ」


「え、えへへ。有難うぞ」


「それはこっちの台詞だ。マジに有難う」


「じゃ、じゃあ取り敢えずは.....話してみせるぞ」


「頼むぜ相棒!」


そして俺達はそれぞれで動き出した。

マジに時間は無い。

今は3年生の2月だ。

つまりタイムリミットが迫っている。

急がなければ。



「御免なさい。貴方とは付き合えない」


そして2月の終盤。

かなり良い感じのカフェで中谷へ告白したが。

その様に言われてしまった。


中谷は赤くなりながら俺を見て唇を噛んでいる。

そうか駄目か。

思いながら.....俺はジュースを飲む。


ゴメンね変な事を言ってしまって、と俺は慌てる。

そして俯いた。

空に言われて中谷をその。

デートに誘えたから良いと思っていたが.....マズかったか、と後悔する。


「あ、あの。実は.....その。私、すっごく嬉しいの。佐藤くんに告白されて」


「.....え?」


「私ね。.....でも私じゃなくてもっと周りを見てほしいかなって思うの。だから貴方とは付き合えない。そういう意味なの」


「それはどういう.....!?」


私はただ貴方が好きになっただけ。

だから私は彼女には勝てない。

その。

だから私は.....彼女に譲りたいって思うの、と言ってくる中谷。

意味が分からないんだが。


「ねえ。佐藤くん。貴方は好き?」


「え?何がだ?」


「空ちゃんの事。私.....気付いてほしいって思う。空ちゃんの必死の想い」


「.....え?それはつまり.....」


「うん。空ちゃんってずっと感情を隠しているんだよ。.....ずっと5年間」


「.....まさか.....そんな馬鹿な!?」


ずっと見てきたから分かるよそれぐらい。


5年間友達だった私。

私じゃないよ。

振り向いてほしいのは.....空ちゃんなんだよ。


彼女は気付いているけど押し殺しているから、と。

貴方が猫の手を借りてしまったから言い出し辛くなったんだよ、と言ってくる中谷。

俺は愕然とした。


「だから追って。今からなら間に合う。空ちゃんに考えを伝えてあげて」


「でも俺は.....やっぱりお前の事が.....」


「そうかな。.....そんな目はしてないよ。今の君は」


「.....!」


空の事が好き?

ずっと一緒に居る様な友達感覚の?

嘘だろ、と思いながら考える。

そして赤面した。


「そうか。.....俺は想いが変わっていたんだな.....」


「だから今からなら間に合うよ。5年だよ?片思いに5年。駆け出して行ってあげて。早く」


「.....分かった。有難うな。中谷」


そして俺はその場から駆け出して行く。

それから.....電話して居場所を聞いてから。

空を見つけてから想いを伝えた。

泣いていた空。

だが俺の言葉に.....涙を浮かべた。


「.....良いのか?我みたいな.....奴で」


「お前が好きだ」


「.....」


大粒の涙を流しながら俺を見てくる空。

俺はその姿を見ながら苦笑した。

そして涙を拭ってやる。


まさかコイツの手を借りた事によって感情を押し殺すとは。

後で知ったが.....空はずっと中谷に俺の事を隠しながら相談していたそうだ。

押し殺す様な感じで、だ。

それで気付いたんだなアイツ。


中谷も俺が好きだった。

だけど5年の片思いには勝てないだろうと。

俺という権利を譲った。

中谷は、1番の幸せだよ、と笑顔を浮かべてくれた。

そして俺達は卒業式を迎える。


春風が舞う中。

俺達は笑顔で卒業が出来た。

まさかこうなるとは思ってなかったが。

考えながら.....俺は空を見上げる。

今ある箱庭の様な空を中谷と空と一緒に。


fin

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