徒然で日々
久利生 慧
第1話 吾徒然なり
私は、何をしてもよい、何もしなくてもよい、そんな時間を過ごすのが得意である。
読書にふけるのもよい、動画配信サービスで過去のドラマや映画を見るのもよい、お気に入りのゲームに熱中するのもよい、お昼寝をするのもよい、なーんでもないことに考えを巡らすのもよい。
こんな時間を私は過ごしている。
大学生の頃のようだな。
あの頃は、まさに何をしても、しなくてもよい時間だった気がする。
(まあ、人にもよるだろうが)
…だったということで、私は大学生ではなく、専業主夫である。先日、仕事を辞め専業主夫として勤めることとなった。
こうして、私は今、なーんでもないことをここに綴っている。
不意に、文章を書いてみたくなるのだ。
文豪でも乗り移ったのであろうか。
よし、書こうと思うと設定を考え始める。Aは天才外科医で、、AとBとは、実は兄弟で…。いつも、ここで終わってしまうのが私。
私は、シチュエーションや設定を考えることそのものが好きらしい。そこから色々な妄想する。子供の頃は、寝る前にその想像の世界へと羽ばたいた。
その設定作りは、妄想からノートに移り。覚えきれないほどのストーリーを記録しておいた。
これで、何度も見返すことができる。
大人になると、一度ノートを捨てた。あの時の私は、それが「大人ななること」だと思ったから。そのノートは「幼稚なもの」のように感じた。
それから数か月後。
不意に憑りつかれたかのようにノートに設定を書きなぐった、やめる、書きなぐる、を繰り返した。
いつの間にか、ストレスの解消法となっていたようだ。私はその頃、仕事の様々なことに困惑し悩み、苦しんでいた。
このノートは誰にも見せたことはない。誰しも、友人にも兄弟にも親にも見せることのできない一面があるだろう。それが、私にとってのノートだ。
このノートを見せたことのある人がひとり存在する。
それは、妻である。
私の記憶が正しければ、妻は(その時は、恋人関係だった)ノートを偶々発見し、中を見た。私は、びっくり仰天である。何といっても見せられない部分のTOP ofTOPだから。
「架空の、、設定とか、そういうのを書いてて、、あの、昔からの癖みたいな、、。」
しどろもどろだった。妻は、
「ふーん、まあこれだけ一生懸命なれるのすごいやん。」
と言った。
変わり者だなあ。
友人にも親にも見せることができない、TOPofTOPの、それこそ私のコア的部分を、「一生懸命になれるもの」とプラスな表現してくれる。
そんな妻は、変わり者で非常に素敵な人だと思う。
そんな妻。実は何をしてもよい、何もしなくてもよい時間を過ごすのが苦手らしい。この時間を、何もせずに終えてしまい、もっと有意義に使えたなと感じてしまう。それが嫌らしい。
私にとっては、何もしないこともその時間の良い使い方なのだが。
という理由もあって、妻は休日に突然、「ここに行こう」と提案をしてくる。
「どこかに行かねば、何かをせねば」モードに入った妻である。因みに、妻も提案した場所に行きたいと強く思っている訳ではない。
私は、この手の提案が苦手だ。突然の予定が苦手なのである。なので、いつも「行きたくないなあ」と太字のマッキーで顔に書いたかのような表情になる。すると、妻も「何その態度」と不機嫌な顔になる。こうして、冷戦が勃発するのだ。
なんとも厄介な夫婦である。
(厄介率で言えば、おそらく私の方が圧倒的に高いだろう)
そんなこんなで我が家では、前日までに休日の行動をある程度決めておくことが、お互いにとって良く、また、冷戦を防ぐ、最善の策となった。
文章を書きたいと思っていたら、冷戦の話までえらく飛んできてしまった。何をしてもよい時間なのだから、よしとしようじゃないか。
さて、午後3時、洗濯物をいれようか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます