兄貴の誕生会
オカメ颯記
兄貴の誕生会
朝起きたら、ラ〇ンが入っていた。
「はぁ? 今から誕生日会をする? それも俺の家で?」
俺は目を疑う。
すっかり忘れていた兄貴の誕生日。同じ町に住んでいるのに、普段は全然顔を合わせることもなく。互いの日常が忙しくて、兄貴がいるということ自体忘れがちな日々を過ごしていた。
それが、いきなりの連絡だ。
「なんでだよ。いつだよ……あぁ? 昼過ぎ?」
俺は慌てて飛び起きる。俺と一緒に惰眠をむさぼっていた猫もベッドから追い出される。
すまん
兄貴からの返信は短く、切羽詰まったものだった。
俺の部屋も、とても誕生日会を開くことができるような場所ではない。
ただ、それでも、兄貴の部屋よりはましかもしれない。
俺は一度招待された部屋を思い浮かべる。あそこは掃除するとかしないとかいうレベルの部屋ではなかった。なにしろ、中は兄がかき集めたコレクションでいっぱいで、モノを置く場所にも困るほどだったからだ。
しかし、なぜ、誕生日会? 互いの誕生日を祝ったのはいつだったのだろうか。そんなものに頓着する性格ではなかったはずだ。
あの子の希望
……
女か? まさか、三次元の女の子なのか?
「嘘だろ」
二次元に傾倒していない俺ですらいない、彼女ができたとか……信じられない。
「嘘だよな、なぁ」
俺は同居人、いや同居猫に思わず話しかける。もちろん、返事はない。
「と、とにかく、支度だ。準備しないと」
まずは、部屋の掃除だ。掃除道具はどこにしまったかな?
俺は猫を追い立てながら、掃除機を探す。
「ああ、おまえが手伝ってくれたらなぁ」
どこからか転がり出てきた猫のおもちゃで遊ぶ同居猫に愚痴をこぼす。
食べ物、お菓子、プレゼント
また、兄貴からの連絡だ。
食べ物? 食べ物は〇ーバーにお任せだ。お菓子は、昨日買ったポテトチップスがあった。
プレゼント……何かあったかなぁ。棚の隅に転がっていた菓子のおまけのことを思い出す。ごみとして捨てようと思っていたものだったが、兄貴にはぴったりの贈り物かもしれない。
ニャー
役に立たない同居猫が鳴いた。
「ごめんな、餌、後でやるから」
ニャー
まるで俺の注意を引くように猫は鳴く。
「なんだよ、何か用かよ」
猫は俺の注意を引いたことを確認すると、ふいと後ろを向いて部屋の隅に行く。
そのあとに残されたのは一枚のはがきだ。
ああ、そうか。この猫を拾ってきたのは兄貴だった。
俺はそのはがきを拾い上げて、思わず笑う。
はがきに残されたのは汚い猫の足跡。猫から兄貴へのプレゼントだ。
兄貴の誕生会 オカメ颯記 @okamekana001
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます