バイトをするなら下着屋さんよ

永嶋良一

1.氏神様お願い!

 あ~、ピンチだ。大変だ~。


 えっ、何がピンチかって?


 私のおうちは下着屋さん。それも下町の古い商店街の中にある下着屋さん。お父さんとお母さん、それと女子高生で一人娘の私が勉強の合間にお店を手伝って細々と続けてきたのね。


 ところがね、最近、商店街の近くに大きなショッピングモールができて、その中に綺麗なランジェリーショップがオープンしたのよ。おかげでうちのお店の売り上げが激減しちゃった。


 そこへ持ってきて、お父さんとお母さんが交通事故に会っちゃたの。命には別条なかったけど、二人とも足を折ってしまって、一カ月は入院だって。。。


 こうして、ちょうど春休みだった女子高生の私が、一人でお店を背負って立つことになってしまったのよ。お客さんは少ないんだけど・・それでも、仕入れから陳列、接客、販売まで何から何まで一人でやってると眼が回る忙しさ・・そう、猫の手も借りたいって、きっとこのことね。


 入院中のお父さんとお母さんに相談すると、二人とも「うちも店をたたむ時がきたなあ」なんて気の弱いことを言いだすのよ。こうなると、私がバイトでも雇うしかないわ・・なんて思ったんだけど、私、バイトなんて雇ったことがないのよねえ。


 どうしたらいいか分からなかったので、とりあえずお店の前に『アルバイト募集』と書いた紙を貼って、近所の氏神様にお参りに行ったの。


 氏神様。どうか、いいバイトさんが来てくれますようにって、私、必死になってお願いしたわ。


 そしたらね、氏神様から帰ってくると、お店の前に、私と同じくらいの若い男の子が立っていて、恐る恐るお店の中を覗き込んでいるのよ。


 

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