猫にあるのは前足と後足。手はない。では、猫に手を借りるには?
三国洋田
口は災いの元
猫の手を借りた結果が知りたい?
仕方ないですね。
お教えしましょう。
むかし、むかし、でもなく割とごく最近。
あるところに、茶トラの雄猫を飼っているおっさんがいました。
おっさんは仕事がとても忙しく、いつも猫に向かって「猫の手も借りたい」と言っていました。
それをいつも聞かされていた猫は「猫に手はない、あるのは前足と後足だろ、アホ飼い主が!? そんなことよりも、ウマいオヤツをくれ!!タラバガニ味のヤツが良いぞ!!」と思っていました。
ある日、おっさんの仕事が、すさまじく忙しくなりました。
おっさんは何度も「猫の手も借りたい」と言いました。
あまりにもうるさいので、猫は手を貸すことにしました。
しかし、猫には手がありません。
なので、手のある生物に進化することにしました。
手のある生物とは何か?
そう、もちろん、人間ですね。
身長約二メートル。
スキンヘッドで、猫耳のカチューシャを付けている。
筋骨隆々。
日焼けした黒っぽい肌。
無駄毛はすべて処理されている。
全裸。
猫は、このような姿の人間の男性に進化しました。
そして、猫はおっさんに「仕方ないから、仕事を手伝ってやる。ありがたく思え」と言いました。
おっさんはとても驚きましたが、忙しかったので手伝ってもらうことにしました。
しかし、いくら姿が人間になっているといっても、元は猫です。
人間の仕事ができるわけがありませんでした。
それどころか人間の常識すらも、よく分かっていませんでした。
おっさんは猫に仕事と常識を教えることになり、余計な仕事が増えました。
しかも、猫は全裸だったので、服が必要になりました。
おっさんは仕方なく服を買いました。
当然、これは余計な出費ですね。
さらに、姿が変わってしまったことにより、猫の癒しパワーがなくなったうえに、男ばかりでむさ苦しさが増大しました。
おまけに、猫には元々の習性が残っており、ネズミなどの小動物や虫を追いかけたり、おっさんの膝の上に乗ろうとしたり、一日十二時間以上寝ていたり、猫用のトイレで用を足そうとしたりもしました。
おっさんは「余計なことなんて言うんじゃなかった」と激しく後悔しました。
いかがでしたか?
これが猫の手を借りた結果です。
皆さんも猫の手も借りたいなんて、安易に口にしない方が良いかもしれませんよ。
猫にあるのは前足と後足。手はない。では、猫に手を借りるには? 三国洋田 @mikuni_youta
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