LAA赤ずきん
LAA赤ずきん 1
「赤ずきんちゃん、じゃあ、手はず通りにお願いね」
「はい、ママ」
「これを、おばあさんのお家に届けてね」
「はい、ママ」
「とちゅう、道草してはダメよ」
「わかってるわ、ママ。いってきます」
赤ずきんちゃんはママに渡された大きめのバスケットを持ち、お気に入りの真っ赤なLos Angeles Angels(以下LAAと略)のキャップをかぶって、お家を出発しました。
赤ずきんちゃんは、大谷翔平選手が大好きです。
大谷翔平選手の推し活をするために野球のルールもカンペキに覚え、大谷翔平選手の出場する試合はすべてチェックし、録画をして観戦していました。
もちろん、ネーム入り
赤ずきんちゃんの部屋は、大谷翔平選手の写真や関連書籍、LAAのグッズであふれています。
この真っ赤な「〇EW ERA」のキャップは、そんな赤ずきんちゃんにおばあさんが買ってくれた物です。
以来、赤ずきんちゃんはいつもこのキャップをかぶっているので、みんなから「赤ずきんちゃん」と呼ばれていました。
赤ずきんちゃんはお家を出て、駅へ向かうために森へ向かいます。
その姿を、木の影からじいっと見ていたのは、オオカミです。
「しめしめ、前から美味そうだと思っていた赤ずきんが、一人で出かけるぞ。あの子はいつもLAAのキャップを被っているから見つけやすいなあ」
オオカミは舌なめずりして、赤ずきんちゃんの後をつけました。
赤ずきんちゃんの推しが大谷翔平選手だということは、みんなが知っているほど超有名な話です。
大谷翔平選手をダシに使えば、赤ずきんちゃんはちょろい――オオカミは前からそう思って、チャンスをうかがっていたのでした。
「こんにちは、赤ずきんちゃん」
「あら、こんにちは、オオカミさん」
「今日もLAAのキャップが素敵だね」
「どうもありがとう」
「昨日の大谷翔平選手の活躍もすごかったね」
ほんとうはオオカミは野球なんか観ません。
だからもちろん、テレビで試合を放送していたかとか、大谷翔平選手が活躍したかどうかなんて興味もないし、知りません。
テキトーに言ってみただけです。
オオカミはいつもテキトーなのです。
ところがオオカミの口からでまかせに、赤ずきんちゃんはものすごく食いついてきました。
「でしょでしょ?! 三回の裏の投球なんてもう神すぎてガチヤバでダンチに尊すぎてめまいがっ……でもってその後の打席もすごくね?! やっぱ大谷翔平選手しか勝たんよね!!」
赤ずきんちゃんは人が変わったように大谷翔平選手の魅力を語り始めました。推し活には、時に人を別人格に豹変させてしまうパワーがあります。
赤ずきんちゃんが食い気味に大谷翔平選手の魅力について語っているあいだ、オオカミはふむふむと真面目に相槌をうつフリをしながら、ぜんぜん別のことを考えていました。
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