猫系族と密会した罪で裁きます!
兎緑夕季
世紀の茶番裁判!
「これより裁判を行います。被告は前へ!」
裁判長の高らかな声と共に連れ出されたのは囚人というには煌びやかな格好の女性。
美しいドレスを身にまとい、メイクもバッチリである。
「被告、犬系族の長の娘、ワンダー!」
「はい!」
ワンダーは妙齢の裁判長を見上げた。
「そなたは敵対関係にある猫系族の者と密会したというのは本当か?」
犬系族と猫系族はそれぞれ頭に耳を生やし、しっぽを持つ同種系統の一族だ。
それ故に対立も多く、国同士は長い間争い続けている。
傍聴席の人々が彼女の次の言葉はまだかと固唾をのんで見守っていた。
「事実に相違ありません!」
いたるところから悲鳴に似た声が上がった。
「なぜそのような事を?そなたは我が国を破滅させたいのか!」
「滅相もない!むしろ私は国を思って行動したのです」
「何?」
「裁判長も我が国が置かれている状況は承知しているはずです」
ワンダーは傍聴席を振り返る。
「皆も分かっているはずであろう。今この国は新興勢力である外部寄生虫族の脅威にさらされている。それは猫系族も同じこと!」
「だから、なんだと言うのだ!彼らが何をしたか分かっているはずだ!」
「裁判長。逆に問います。猫系族が一体どんな罪を犯したというのです!」
「そっそれは…」
裁判長は唇をかみしめて言葉を紡ぎ出そうと躍起になっていた。
「ほら、具体的なエピソードが出ないではありませんか!」
「しっしかし…彼らがいなければ我々はもっと人々に愛されていたはずだ。国だって巨大化したはず」
「それこそ彼らにも同じ理由が言えます。我々がいなければ猫系族はより進化したかもしれません!」
「ああいえばこう言う!反逆者の言葉に従うつもりはない。そなたに罰を与える!」
「私がどうなろうと構いません。けれど、我々は手を組むべきです!」
ワンダーは強制的に退室させられそうになる。
「やめ~い!」
壁を震わすほどの大きな声が響いた。
振り返れば、猫系族の女王が壇上に立っていた。
その隣には犬系族の王が立っている。
「この裁判の取り消しを要求する!」
王は鋭い声で言った。
「そんな事許されるわけはない!」
裁判長は反論した。
「裁判長こそ、国を滅ぼしてよいと言うのか?」
女王はキッと裁判長に睨みを利かせた。
「なっ!」
「国を動かす者は時として前例にない事をする物である!そして決断する者こそ、王と呼ばれるのである!」
力強い女王の言葉に傍聴席から歓喜の声が上がった。
人々は敵である猫系族の女王に敬意を表しているのである。
この年――
両国に同盟が結ばれたのである。
猫系族と密会した罪で裁きます! 兎緑夕季 @tomiyuki
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