この無職、異世界で有能過ぎる!

黒須

1章 異世界転移

第1話 プロローグ 〜将来への不安〜


 一人暮らしのアパートで俺は朝からモニターに釘付けになっていた。


 なになに『女とエッチしてレベルアップ♡Mr.無責任種付おじさん』

 ちっ、ふざけたタイトルだ。どれどれ……。


 生意気女騎士が『んっほおおおお!♡』

 高飛車大聖女が『んっほおおおお!♡』

 メスガキ王女が『んっほおおおお!♡』


 ざんけんなッ!!たく、けしからん小説だな。取りあえず続きを読もう……。



 チッチッチッチッチッチッ


 時間を忘れ没頭しているとスマホのアラームが鳴った。


 バイトの時間だ。はぁーだるいなぁー、行きたくない。





 バイト帰り、俺は何となく河原の土手に寄ってベンチに座った。

 それから、ぼんやりと景色を眺め、気が付けば夕日を浴びていた。


 バイト……、最近クレーマーが多い。もう辞めたいよ。


 家に帰ってもエロ漫画を読むか、ゲームするか、ウェブ小説を読むだけだ。


 ――――俺はこれからどうしよう。


 そんなことをずっと考えていた。




 大学受験に失敗して浪人するも、一年間バイトばかりした。

 結果、今年の受験も失敗した。


 来年は受ける気にならない。


 そもそも勉強が嫌いで、楽な方に流される性格では救いようがない。

 加えて、将来の目標が無いから努力する気が起きない。


 いや、言い訳はやめよう。

 俺はやりたくないことから逃げる、ただのダメ人間なのだ。


 そう言って諦められれば楽なのだが、今すぐに何かをしなければ、待っているのは悲惨な人生なのだろう。


 中学生くらいまでは、将来は何にでもなれると思っていた。けれど、成人した俺はアルバイトで生計を立てるフリーターだ。


 今年の受験に失敗した時、母親から『将来はホームレスにでもなるの?』と言われたことが、今も胸に響いている。


 実家は田舎で小さなスーパーを経営している。子供の頃から親父が苦労している姿をずっと見てきた。


 だから『こんな仕事はやりたくない。絶対に店は継がない』と生意気なことを言って、実家を出て一年半が過ぎた。


 そして結果がこれ。





「はぁー……、 アイ アム ダメ ニンゲン」


 視線を落とし、キラキラ光る水面を眺めながら、変な発音で独り言を呟いた。


 すると、視界がゆっくりと白けていく。


「えっ? えっ? はぁ??」


 そして、俺の周囲は川原の土手ではなく、全てが真っ白で自分の影すら無い謎の空間になった。


 体が宙に浮いているような感覚だ。重力を感じない。


 どっちが上で、下なのかわからない。

 けれど感覚だけは、はっきりとしていて、これが夢でないことはわかる。


「なんだよ、これ?」


 訳がわからない。

 もしかして俺、UFOに拐われちゃった?www、なんて楽観的に考えているとソイツは現れた。


 何処から来たのか、いつ現れたのか全く分からなかった。


 ただいきなり、ソイツはそこにいたのだ。





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