私がヒロイン!?

まるねこ

第1話

 私、桜庭 楓、24歳。今日はアニメや漫画の祭典で友達と共同でブースを出して本を売っていたの。大成功だった!


絵師さんファンなんですって言われたのっ。


大興奮。友達と健闘を讃えあい、打ち上げで呑んで呑んで終バス待ちしていたんだよね。


気づけばその時にスマホでしていた乙女ゲーム『桃色ファンタジア』の主人公になっていた。


 

 そのゲームはピンク頭の主人公が織りなすキャッキャウフフのド定番ストーリー。あまりに定番過ぎて無料ゲームになっていたんだよね。ただ絵が好きで何周もしてスチルの回収をしている最中だったはず。


スマホしか見ていなかったからどんな状況で転生したか分からないんだよね。頬をつねってみたけど、とりあえず夢の中では無さそう。




それにしてもま、さ、か自分が転生するなんて!それも痛さで有名なヒロインに!どうしよう。芋けんぴレベルなのよ?


入学式当日に遅刻しそうになって走り込み、キャッって第一王子のアインス様にぶつかって恋に落ちるという設定。


…どうしよう。


私の説明をしておくと、私、ローサ・サロー14歳。弟2人、母は幼い頃に亡くし、父との家族4人で慎ましやかな暮らしをしている。あまり裕福ではない。


明日からカテジナード学院に特待生として入学する。一応、前世(?)を思い出す感じでヒロイン乗っ取りでは無いみたい。


ローサとして生きてきた記憶はある。因みにゲームのヒロインであるローサは恋の#猛獣__ハンター__#だけど、私はイケメンは遠くて見ているだけで満足する草食動物タイプ。


のんびりと生きていきたい。誰の邪魔をせずに弟達の暮らしを少しでも良くしたい。貧乏男爵なので常にギリギリの生活。弟達のために費用を何処かで捻出しなければいけない。2年後には入ってくるのだ。


「おーい、ローサ!おはよう。遅刻するぞ!」


はっ!遅刻はだめ!


声を掛けてくれたのは隣のタウンハウスで暮らしている子爵家の長男テト・フォルダ。幼馴染なの。


「テトっ!おはよう。今日から学院よね。一緒に登校して欲しいな」


ゲームではテトをスルーしていたけど、私はテトが好きなのよね。ぶっきらぼうな言葉使いだけれど、いつも側にいてくれる安心感。いいわぁ。


「ローサ?まぁ、いいぜ。ローサの願いだ」



 テトの馬車に乗り込み一緒に登校する。学院の門を潜ればゲームが始まるわ。なんだか何処かの笑ってはいけない感じみたいだけど。


「テト、お願いがあるの。私が転びそうになったら受け止めて、ね?」


「何?転ぶ前提なのか?」


「そういうわけじゃないんだけど、そんな気がするんだよね」



 そして講堂へ向かう途中、案の定人とぶつかり転びかけた。


「ローサ、大丈夫か?」


咄嗟にテトが私の腰に手を回して転ぶのを防いでくれたので助かったわ。おパンツ丸見え事件は無事回避された!


「テト!ありがとう」


そしてぶつかった相手をよく見るとやはり、第一王子のアインス殿下だった。


「アインス殿下、すみませんでした」


私はしっかりと貴族の礼をとる。目を潤ませて『いったぁい』なんてのはもっての外よ。


ここで庶民丸出しは駄目!しっかり貴族としてのマナーで!


目を付けられてしまうわ。


「こっちこそごめん。彼に受け止められたようで良かった。では」


そう言うと殿下はさっと行ってしまった。


やはりアインス殿下は群を抜いてイケメンだわ。天使だわ。人外よ。あんな人とは住む世界が違い過ぎる!


 殿下の後ろにくっ付いていた側近の彼らも攻略対象なだけあってカッコいい!


あぁっ、素晴らしきこの世界!


実物は本当に人外だわ。絵に残したい。


 この世界ではまだ釣書は油絵みたいなやつなのよね。写真は無い。水彩絵の具はもちろんある。これは書くべきだわ。




 決意を固めたところで式も終わり、生徒は各クラスへと移動する。私はもちろんSクラス。殿下と側近達、悪役令嬢のエリアナ様と同じクラス。テトも同じだったりする。


「テト、殿下達って素敵よね」


「なんだ?俺じゃ駄目ってか?」


「そうじゃないわ。テトの事大好きよ?殿下達って別世界の人間でしょう?見て満足する感じ?絵に納めてしまいたいのよね」


「まぁ、そうだな。殿下達はトイレにも行かなそうだよな」


昔のアイドル!?


「そうよね!きっと殿下達はトイレにも行かない妖精なんだわ。是非、絵に残しておきたいわ」


「… そうだな」


何故かテトは呆れた顔をしているわ。


「よし!そうと決まれば描くわっ」


「あんまり無理すんなよ」


「大丈夫よっ!絵を描くだけなんだから」


テトに心配されながらも私は翌日から紙に殿下を描き始める。


久々に描いた感じがする。あー今は猛烈に美男美女を描きたい意欲に駆られている私!

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