猫の温もりを借りようとした結果

紗久間 馨

猫と寝たかっただけなのに

 猫と一緒に寝てみたい。

 冬の寒い日に、猫の温もりを感じながら寝てみたいと思った。

 

 猫が登場するエッセイ漫画をよく読む。猫と一緒に寝るシーンを見て羨ましいと思ったりする。

 

 私は猫と暮らしているくせに猫アレルギーである。一緒に暮らし始めたばかりの頃は、鼻水とくしゃみが酷かった。時間が経つにつれて症状は少なくなり、今では猫に顔を近づけても平気だ。たまにくしゃみが出ることはあるけれど。

 

 そんなわけで猫と一緒に寝るなんてことはできなかった。

 

 なのに、なぜ猫と暮らし始めたのか。それは猫がいるところに私が後で入ったから。アレルギーだが猫は好きだ。




 アレルギー症状が落ち着いてきた頃に、猫と一緒に寝てみることにした。

 猫が私の太腿に乗って寝ている姿を見て、そうしたくなったのだ。

 寒いからくっついて寝てくれるのでは・・・・・・。


 試しに、床に仰向けに寝てみる。私が動くと、猫が目を開けてお腹の上に移動してきた。脚を折りたたんで再び目を閉じる。いわゆる香箱座りだ。

 お腹に感じる猫の温もりと重みがとても気持ちいい。

 猫と一緒に寝るっていいなあ。

 私はゆっくりと目を閉じて幸せに浸った。次第にうとうとと眠気がさしてきた。


 猫が胸の上に移動する気配で目を開けた。膨らみの間に収まり、顔をこちらに向けている。まんまるの目が可愛らしい。

 

 次の瞬間、猫の前脚が顔に向かって勢いよく伸びた。一度だけではなく、二度も三度も。猫パンチを食らわされた。

 爪を立てない優しい猫パンチだが、油断していたため大変に驚いてしまった。


 両手で掴んで猫をお腹の上に戻すと、一旦は座ったものの立ち上がった。

 どこかに行くのかなあ。


「ぐっっっふうぅ・・・・・・」

 お腹にものすごい衝撃を受けて変な声が出た。


 猫がお腹の上から棚に向かってジャンプをしたのである。猫の脚力をもろに食らった。

 横向きになってお腹を抱える。太腿からジャンプされるより痛みが酷い。

 猫、強い。


「にゃー」

 鳴きながら戻ってきて、私の体に前脚を添える。

 どんなことをされても可愛くて許してしまうんだよなあ。


 しかし・・・・・・


 それ以来、猫と一緒に寝るのは諦めた。

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