第1章ー⑦

 冒険者ギルドに戻ってきたら、それなりの人がいた。依頼を終えた人が報告しているみたいだ。

 俺もその後ろに並んで順番を待つ。ギルドで登録してから今日一日ずっと歩いていたのに、全然疲れていない。追放された原因になったスキルだけど、凄過ぎだろう。


「えっ、もう終わったのですか?」


 三枚の依頼完了の受領証を渡したら驚かれた。どうやら薬草を一度に持っていったのもそうだが、依頼を終えたのに全然疲れた様子がないことに驚いているようだった。依頼達成のサインの入った受領証を、何度も何度も見返していた。


「あ、それより手紙はどうでしたか? 喜んでいました?」


 ミカルの言葉に受付嬢たちが一斉に口を閉ざし、まるで聞き耳を立てているような感じを受けた。


「えっと、喜んでたよ。ライさんからは感謝もされたし」


 あれ? 変なことを言ったかな。


「それってどういう意味ですか?」

「ラブレターの返事をもらって、お付き合いするようなことになったって言ってた」


 これってもしかして個人情報の漏洩ろうえいとかになるのかな? もしかして罰金とか? 言った後に気付いたがあとの祭りだ。

 もっともそれどころじゃないようだったが。ミカルをはじめ受付嬢たちは黄色い歓声を上げて、周囲にいた冒険者たちは崩れ落ちて拳を床にたたきつけている。あ、あの人泣いている。


 後で聞いた話だが、ライはギルドの仕事を時々受けるようで、その片思いは有名で結構な人が知っていたらしい。

 ちなみに冒険者たちのあの反応は、先を越されて悔しがっていたとのことだ。


   ◇◇◇


 なんかよく分からないまま、冒険者デビューと初めての依頼は終了した。

 ただの荷物を運ぶ依頼だと思っていたのに、まさか感謝されるとは思わなかった。お金と経験値を稼ぐためだと思って受けた依頼だったが、あんなに感情を爆発して感謝されると素直にうれしく感じたし、世界は違ってもやっぱ同じ人なんだなと実感させられた。報酬は格安だったけど、満足いく依頼だったかな?



「ステータスオープン」


 宿に戻って食事を済ませたら、寝る前に今日の成果を確認する。スキルポイント次第では新しいスキルを覚えようと思う。


――――――――――――――

スキル「ウォーキングLv 9」

効果「どんなに歩いても疲れない(一歩歩くごとに経験値1取得)」

経験値カウンター 4927/10000

スキルポイント 8


習得スキル

【鑑定Lv 3】

――――――――――――――


 スキルポイント8か。たった一日で倍になった!

 これは昨日のうちに調べておいたスキルや、気になったやつを覚えてもいいかな?


――――――――――――――

NEW

【鑑定阻害Lv 1】【身体強化Lv 1】【魔力操作Lv 1】【生活魔法Lv 1】

――――――――――――――


 鑑定阻害。効果は鑑定されるのを防いでくれる。

 これは俺が鑑定を覚えられたことから、人を鑑定出来るスキルを持つ者がいるかもしれないと危機感を覚えたのと、王城にあったような鑑定出来る道具が他にもあるかもしれないと思ったからだ。

 一般的なスキルの習得方法は分からないが、王城の者に俺が多くのスキルを覚えたことを知られるのは危険な気がする。今更連れ戻されても困るし。ちなみに鑑定のレベルが3になっても、未だ人物鑑定は出来ない。


 身体強化。これはレベルが上がると筋力、体力、素早さが強化されるようだ。ステータスの数値の価値が未だ分からないから、強化出来るところは強化しておきたいと思って取った。魔物がいるような危険な世界だしな。


 魔力操作は体内の魔力を感じられるようになるスキル。これは単体で使用するというよりも、魔法を発動した時に消費するエネルギーを無駄なく使えるようにするものだ。これのお陰で魔力の動きをなんとなく感じられるようになった。主に生活魔法のために取ったスキルだ。


 生活魔法は洗浄や火おこしなど、生活に必要な雑多な魔法を使えるようになる。

 覚えた動機はやっぱり汚れを洗浄してくれる魔法が使えるようになるからだ。今日の帰り際、ギルドにいた魔法使いの人が厚意で使ってくれて、是非覚えたいと思った。汚れていた衣服が目に見えて綺麗になっていくのは、今思い出しても不思議な光景だった。

 これは衣服だけでなく、体にも効果があるのが何よりも大きい。


 ……正直忙しかったけど、悪くない一日だった。それに新しくスキルも覚えたし……明日からも頑張っていけそうだな。

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