雨の日
曙雪
雨の日
私は雨女。
遠足でも運動会でも大事なお出掛けの日には必ず雨が降る。
ほら、今日もしとしと雨が降っている。
「今日はせっかくの球技大会だったのに、雨天延期だって。」
「やっぱあいつがいるからじゃね?」
「明日あいつが休めばいいんじゃない?」
あはははは。心ない笑い声が教室のなかに響いている。
前の席にいる私に聞こえるようにわざと大声でいっているんだろうな…。
明日は学校を休もうかな…。
いつも通りの帰り道、傘をゆらしながら歩く。
教室での言葉が頭をよぎる。
私って何て迷惑な存在なんだろう…。
シャー!
道端を歩く猫さえも、迷惑そうな声をあげる。
「君は私のこと嫌じゃないの?」
私より少し高い位置にいる君に問いかけるも答えは返ってこなかった。
どうしてかな、みんなが嫌う雨の日には必ず彼が来てくれる。
のろのろと歩く私に歩調を合わせるようにゆっくり歩いてくれる。
「君は雨がすきなの?」
やっぱり返事は返ってこなかった。けれど彼は頭を少しだけ縦にゆらしたように見えた。
家が見えてくると、塀の上を歩いていた彼は背中に乗せた大きな貝殻を揺らしながら、水色のアジサイのなかに去っていった。
みんなが私の雨を嫌うけど、彼だけは雨を嫌わない。喜んでくれる私のヒーローだ。
雨の日 曙雪 @m-tree
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