第5話 作品を「温める」という行為について
第4話では、私が小説を書くときにどんなことを考えているのか、Twitterでのツイートを転載することで明かした。
第5話では、このエッセイもどきを連載する一番のきっかけでもある、私が満を持して告白したかった話をしようと思う。
本日、小説『ハルのメトリア』の第1幕が完結した。
https://kakuyomu.jp/works/16816927861608630007
これは見切り発車でストックゼロな『都市開発〜』とは違い、もともと他サイトで毎日連載していた小説である。明日からも、番外編や第2幕を淡々と更新していくつもりだ。
……ここで私が明かしたいのは。
『ハルのメトリア』はいったい誰のために、なんのために書いて発表した小説だったのか、という話である。
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結論から言ってしまえば、本作はいわゆる「温めて」いた小説である。
一度もインターネット上で公開したことがなく、小説大賞などへの応募もしたことがなく、ただ何年も頭の中で放置されていた小説だ。
頭の中で、放置されていた。ここ重要。
それも脳内で出来上がっていたのは「小説≒文章」ではなく「プロット≒箇条書きまたはト書き」である。今は脳内で出来上がっているプロットを、小説という形になるよう文章化しながら、まだ詰まっていなかった
ちなみに脳内ではどの程度物語が進んでいるかといえば、今「カクヨム」で公開されているのが第1幕、そして執筆を終えているのが第2幕とするなら、概算でもざっと第20幕くらいだろうか。……『ONE PIECE』か『とある魔術の禁書目録』かなにかかな???
本作は、カクヨムで再掲するまでは「小説家になろう」で毎日連載をしていた。
およそ1ヶ月もの間なんとかこうにか毎日更新を続けることができたのは、プロットがすでに完成していたからという部分が大きい。見切り発車な『都市開発〜』とはここが違う。
裏を返せば、プロットや世界観、キャラクター同士の関係性などスタート時点で設定がかなり固まっているため、これらの設定や物語の方向性を途中で大幅変更するような柔軟な真似ができない。
そのくらい作者が個々の設定に愛着を持っているということだ。何年も「温めた」小説なだけのことはある。
ここも『都市開発〜』とは大きく違う部分だ。もちろん『都市開発〜』のほうも、あれはあれで各キャラクターへの愛情は作者的には持っている。しかし第1章のあとがきで記した通り、読者人気が出たからという理由で第2章の方向性をあっさり切り替える判断を下す程度には、あちらの小説はまだまだ明確な世界観や設定が構築されていない状態なのである。作者の脳内でも、である。
よって『ハルのメトリア』に関して言及すべきは、どうして今、公開することにしたのかである。
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エッセイの第1話でも言及した通り、本作は執筆が間に合ってさえいれば「カクコン」に応募する可能性があった小説だ。結果的に応募までには至らなかったが、今は代わりに別の小説大賞にエントリーしている。
ただ、本作を公開することに決めた根本的な動機はコンテストへの応募ではない。コンテストはあくまでも本作を公開する手段やきっかけに過ぎない。
本作を公開するに至った動機はふたつある。
これも実は、エッセイの第1話でちらっと言及した話である。
ひとつは、『ハルのメトリア』という小説の物語を進めるため。
もうひとつは、私という人間の物語を進めるため。
特に後者の理由が大きい。
私は今、ひとつの人生の分かれ道(進路とも言う)に差し掛かっている最中であり、そんな自分の人生を不足なく悔いなく前へと進むためには、自分の中でのみ温め続けてきた『ハルのメトリア』は、いい加減自分の外側へと吐き出さなければならないと感じていたのだ。
温めていた期間が長い小説であればあるほど、それを発表するという決断を下すまでにかなりのエネルギーを消費する。
そして今は、発表して良かったと本当に思っている。
『ハルのメトリア』自体へのフィードバックも非常に多く得ることができた。本作の続きを書き進める意欲はもちろんのこと、『都市開発〜』を含め他の作品もいろいろ書いてみようという創作意欲が増した。
なにより、今まで訳あって敬遠してきたコンテストへの応募も、かなり前向きに考えられるようになった点が大きい。
……要するに。
『ハルのメトリア』とは他でもない、私自身のために書いた小説である。
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今これを読んでいる方で、自分の手元や脳内で温め続けている小説をお持ちの方はいないだろうか?
作品を「温める」という行為の是非については、一概に答えが出せるものではないと思う。温めている理由や事情が作品によってまったく違うからだ。
──ただ。
もしも、上記で提示した私の一例を読んで、何かしら心当たりがあったなら。
悪いことは言いません。
その小説、さっさと吐き出しちゃいましょう。
その小説や作中の登場人物だけでなく、あなた自身の
最後に、このページで私が吐いた大嘘を自白して締めにしようと思います。
何年も温めていた、は嘘です。
本当はかれこれ10年以上温めていた小説です。ひと桁じゃ効かないです。
皆さまはくれぐれも、ひとつの小説をだらだらと温め続ける行為は
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