第46話 独断専行 どくだん-せんこう

独断専行 どくだん-せんこう

自分だけの判断に基づいて、勝手に行動すること



 暴走ダンジョンの火口にAステージSランク以上のクランが集まっていた。ユキ姉さんによると、火口のからの魔力の噴出がなくなり、魔物もワイバーンやワームではなくAステージの魔物らしい。

 人型のゴーレムや飛翔型のロック、リッチとその配下のデュラハン、グール等らしい。油断は禁物だが、今の私なら、一日あれば周辺は直ぐに狩れるだろうとのことだ。

 カグラも行きたがったが、エスワットさんがどこかにいる中では違う意味での油断は禁物、待っていてもらうことにした。


 弐号機のマントを着用し、エスワットさんについていく。


『皆さん。ご紹介いたします。今日から魔物討伐のクエストに来ていただきました、私の級友、イブキさんです。仲良く差し上げてください』


荒くれ共がこっちを向く。


 “ガキかよ”、“足手まとい”、“いい女じゃねえか”、“胸もませろ”、“しょーべんちびるなよ”、”ケツ見せやがれ“ ・・・・・


 素敵な言葉があちこちから飛び交う。


『君たち、ダメじゃないか。エスワット様のご学友に対してそんなことを言うな』


 そこには白い歯をキラリと光らす色白のキラキラした白い防具に身を包んだ金髪男がいた。


『まあ、シャルロット様』


『エスワット様、イブキちゃんはこのシャルロットにお任せください。この勇者だけに許された王国の剣、エクスカリバーに誓ってイブキちゃんを護ります』


 おいおい、魔物討伐じゃないんかい。


『シャルロット様、イブキさんのことお願い致します。じゃあイブキさん、また後でね。シャルロット様はトリプルSの勇者様なの。シャルロット様に付いて行けば問題ありませんからね』


 シャルロットのクランは世界美女博物館のような、いろんなタイプの美女が揃っていた。あちこちから“またあいつかよ”、ハーレム野郎“、”俺たちにも分けろ“、いろんな声が聞こえる。


 シャルロットのクラン“栄光の導き”や野郎共のクラン達はパイプライン敷設チームと一緒にAステージから移動し、魔物討伐を行ってきたらしい。

 王国からのBステージ転移ゲート街までのパイプラインは既に敷設が終わっているが、転移街に近い途中での敷設において強力な魔物が現れ、作業が中断されている。


 そこにはAステージダンジョン内にあったような、魔物が作った“悪魔の城”がパイプライン傍にできており、この討伐がこのクラン達の最後のクエストだ。“栄光の導き”と他のクランで別れて魔物討伐を行うらしい。

 私は“栄光の導き“と共に”悪魔の城“の左前に陣を張ったリッチが指揮するゴーレム部隊との戦闘に参加する。その他クランは右側のキングオーガが指揮するグール部隊に当たるらしい。

 ゴーレムたちが襲ってきた。


『身の程もわきまえない輩どもめ、勇者のクラン“栄光の導き”の前に立つなんて100年早い!行くぞ』


 シャルロットの横にお姉さま方が並ぶ。


『いでませい!穢れを浄化せし炎の化身イフリート!現世に彼の者の鬼哭シュウシュウを響かせませい!ヘルフレイム・バースト!!』 


 前のゴーレム達が火に包まれた。


『全ての命を育む今生の水母よ!全ての汚れを封じ閉じ込め!永遠の棺桶に入りませい!凍て尽くせ! フォーリング・ヘイルニードル』


 前のゴーレム達が凍っていった。


『あなたを感じる!この世を覆うわが父よ!虚空より天風のご支援を!いずこより参りし無数の刃となり切り刻め!スパイラルブラストレイ!』


 前のゴーレム達が切れていった。


『浮世をさまよう百鬼夜行よ!闇から顕在し彼の者の精神を喰らえ!彼の者を生贄に捧げる!アポカリプス・カタストロフ!』


 前のゴーレム達が同士討ちを始めた。


 かっこいい!!!お姉さま方の素敵な魔法が続いた。


『よし、僕の番だ!』


『闇を切り裂く栄光の刃!天使の愛が僕を包む!今こそ聖なる光を!我を介して顕在せよ!薙ぎ払え!ラグナロク!』


 シャルロットがエクスカリバーを振る。前のゴーレムが光の薙ぎで消滅していった。“栄光の導き”の前に広がるゴーレム部隊は消滅したが、次から次に出てくる。デュラハンの騎馬隊がきた。


『ええい、数だけは揃えやがって、ここは僕に任せろ!皆退却だ!』

 

 白馬を具現化させたシャルロットは単騎、デュラハンの騎馬隊に突っ込んだ。デュラハン隊と決闘だ。


 “カキン!カキン!カキン!” 切り結ぶシャルロット、


『イブキ、ここは戦場だ、油断するな!後は僕に任せて引くんだ!』


 エクスカリバーが光る


『聖なる光よ!全てのものを拒絶せん!彼の者達をを守りたまえ! スーパーシャインバリヤー!』


 お姉さま達の前に光るバリヤーができた。


『さあ、俺を盾に!皆退却だ!』


 いそいそと退却するお姉さま方、ごっつい魔法で魔力切れらしい。ギルドの作った城に入る。まだ荒くれ野郎どもの姿がない。

 城壁に上がり気配を探る。いた。“水兄さん”で氷のレンズを作り目視する。かなり先でデュラハン隊とグール共に包囲されている。

 しゃーないな。そこまで転移し跳び降りる。薙刀“雪様”の一閃で辺りのグールとデュラハン共を真っ二つに切る。


 ポカンとしている荒くれ達。


『てめえら!ポコチンついてんのか!赤い砂塵のイブキ様がいる限り!こんな有象無象ごときに遅れをとるな!者ども!続け!』


 前方には“悪魔の城”、二つに切れても動いていた魔物に止めを刺しながら、湧き出る魔物を殲滅していく。

 後ろから “姉さんに続け!”、“見たか、姉さんの舞いを”、“姉さんがいれば怖いモノはねえ”、“姉さん一生ついていきますぜ“、なんて声が聞こえる。

 キングオーガの首をちょん切り、薙刀“雪様”に刺し掲げる。


『者ども!声を上げろ!私に続け!』

 “うおー―――”


 悪魔の城の前に陣取る魔物達を光漸で殲滅した。城の城門を火弾で吹っ飛ばす。


『続けー!』


『おう!』


 門に入り魔物を切り殺す。サイクロプスも真っ二つ、ミノタウルスやケンペロスも首を飛ばす。


『敵が大将この天守!野郎ども!大将首を持ってこい!』


『うおー――!』


 光漸で天守を丸ごとたたき切る。城が崩れ、崩れた中から魔物が這い出る。そこを冒険ヤローが倒していく。


 私は門付近にどっしり座り、横にボックスから出したミスリルインゴットを山の様に積み上げた。


『イブキ姉さん!魔石です!』


『よし、ミスリルをとらす』


『姉さん!Sランクの魔石です』


『よし、ミスリルをとらす』


 総じて冒険ヤローより強そうな魔物は火弾であらかじめ手足を吹っ飛ばしておく。


『姉さん、デーモンの魔石です』


『よし、ミスリル2本とらす』


 ミスリルの横に魔石の山ができあがってきた。


『グ、グリフォンがでた!』


『トリプルSのグリフォンだー――!』


 私は気づかれないようにグリフォンの後ろに一瞬転移し、その翼と目を潰して戻る。


『てめえら!イブキ一家のかわいい奴ら!グリフォンごときでびびんじゃねえ!あたしの舎弟になりたくば!今すぐその首取ってこい!』


『うぉー――――――――!!!』


 かわいそうなグリフォンは、魔法は私に抑えられ、冒険野郎共に取り囲まれ、四方からチクチク刺され、とうとう息を引き取った。


『グリフォン!とったどー!!!!』


『でかした!イブキ一家のかわいい子分、者ども勝鬨じゃー!』


『エイエイオー!エイエイオー!エイエイオー!』


『おめーら!名残惜しいが、時が来た。いいか!てめえらの金玉に誓え!いつ何時ともイブキ一家の名を穢すんじゃねえぞ!つまらん生きざまをこのイブキ様に見せんじゃねえぞ!下見るな!上を見ろ!お前らが尻尾撒いた奴らはどうなった!逃げずに戦ってどうなった!常識を覆せ!生きざまを飾れ!お前ら自分を誇れ!誰が見てなくとも!お前らの生きざまは!このイブキさまが見ててやる!お前らの噂を聞かせろ!誰かにではない!この私にカッコつけろ!金玉に私の名を刻め!さらば!』


 転移で“栄光の導き”のクランに戻った。シャルロットは無事にデュラハン隊に勝って、城に戻っていた。


『イブキ、だめじゃないか。勝手に離れちゃ。君のことは僕が守るんだからね、もう僕から離れちゃだめだよ』


『はい。シャルロット様。けど、、、、やはり魔物を見ると足がすくんで・・・・やっぱり私じゃ、無理なようです』


『解った。イブキ、君はBステージに帰っておいで。けど、僕たちが君達をここで守

っているからね。帰っても安心してね』


『まあ、シャルロット様、ぽっ』


 そうして、兄さんの傍に転移し戻った。



 かの国では“イブキ命”というタトゥーが流行したとかしないとか。本当にあそこに“イブキ命”とタトゥーを入れた冒険ヤローは皆から崇拝されたそうな。


『兄さんー-!怖かった!』


 兄さんに抱き着きその匂いの中で至福の時を過ごす。

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