第26話 愚公移山 ぐこういざん
愚公移山 ぐこういざん
大きなことでも、根気よく努力し続ければ必ず成功することのたとえ
ユキは毎朝の鍛錬を継続している。武術に関しては型の意味を理解し、その速さを増していった。もうすぐ仕太刀を俺が務めてもいいかもしれない。呼吸も安定し、瞑想では巨大なパイプで流しこむことができている。イブキにはそのパイプを全開にしている。
今日から第四階層に入る。
『第四階層はオーガ、スケルトン、デュラハン、ボスのデーモンです。魔石はスケルトンが頭蓋骨、デュラハンは心臓、デーモンは魔石を体内で動かします。デュラハンとは騎馬戦、デーモンは空中戦です。デュラハンは火魔法と自分の影を動かす闇魔法、デーモンは4種の魔法と闇魔法を複数同時に用います』
雰囲気は変わった。フォールドは薄暗い荒野だ。森の中でスケルトンの群れをオーガが率いていた。スケルトンは人型だけではなく、獣らしき造形も多い。武具は盾と剣だ。弓から試すが、密集し盾で防ぐ。
火弾は貫通し骨は砕けるが動きは止まらない。頭蓋骨を砕かない限り倒せないのであろう。国行を旋回させ頭蓋を砕いていく。瞬移で絶えず動いていないと殲滅速度が追い付かない。
わらわら集まる数をこなせず、火弾と砂塵で潰していく。最初は30体程度の集団であったがはずだが四方から集まってくる。尽きない。
砂塵で間にあわなくなってきた。そこにデュラハン隊が突っ込んできた。スケルトンが火耐性あるせいか、火魔法をバンバン撃ってくる。
雷を纏わせ稲妻で打ち消していくが、デュラハンも俺の鉄火弾を耐魔法と盾でレジストしている。奴らを近接の間合いまで近づけてしまう。1撃では倒せず、斬撃戦で手数が必要になり、スケルトンが疎かになる。
その間に残りのデュラハンが俺を囲う。輪になった奴らの影から無数の黒い触手が襲ってくる。
『空中です』
ユキの声が聞こえた。空に飛びユキのボックスに繋げ、第三階層で集めた巨石を落としていく。さすがにスケルトンは潰れる。デュラハンは石を切り、影の触手が石を受け止めていたが、それ以上に巨石を降らせ潰す。
巨石の回収と撃ち込み、これを3回繰り返し、ようやくスケルトンとデュラハンの群れを殲滅できた。スケルトンが涌いていた所に核があったので回収した。
火力が足りない。クランで分業できればもっと速いのだろう。うち漏らしたスケルトンを鉄火弾で倒し、デュラハンは鎖分銅で潰しながら考えた。巨石攻撃は効果あるが上に空間がある場合だけだ。屋内では使えない。地上での広域殲滅力が必要なのだろう。
次に向かう。スケルトン達が襲ってくる。引きながら土魔法で作った穴に落とし埋めていく。数には対応できるが、ユキから地中のスケルトンの動きは止まっているが倒せていないとの連絡があった。ダメだ。
今度は限界まで火弾を矢のように伸ばし水平に撃っていく。連射する。着弾と同時に複数のスケルトンを貫き動きは止まる。
『雷と火弾と国行を併せてください』
国行に火弾と雷を合わせ、飛斬の要領で薙いだ。白い光が線で繋がった。水平に薙ぐと目の前のスケルトン群は巨大な剣で切られたようにその場に倒れた。これだ。ユキによるとデュラハンも同時に倒していたようだ。
「ユキ、助かった。遠距離且つ広域戦でこの技は使える。名前を付けてくれ」
『・・・・・・。国行の雷飛斬の改良ということで“光漸”はいかがでしょうか』
「わかった。良い名だ」
光漸、新たな技を手に入れた。
第四階層を奥に進む。群れに出会えば光漸で潰し核を回収していく。一度、限界まで上空に跳びそこから巨石を落とす攻撃も試した。威力は十分あるが巨石が崩れ回収不能だ。また命中精度が落ちる。光漸の方がいいな。移動速度を上げ、ボスエリアまで来た。ここは荒野で周りは何もない。
『ここです。しばらくするとデーモンが現れます。デーモンは飛びながら4つの手で際限なく魔法を撃ってきます。稲妻で消せるとは思いますがご注意を。火弾や光漸でもダメージを与えられますが、空中では当たらないと思います。地上に落とし国行で切る。これが有効と思います』
暫くすると、地上に文字が浮かぶ。そこからデーモンなのだろう、巨大な黒いものが浮いて来た。光漸を放つ。まだ全身を出せていないデーモンは屈むが押し出され、背中の羽らしきものを切断できた。次の光漸を放つが手をこちらに向け、光漸の軌道を変えてきた。その間に俺の必殺の間合いまで距離を詰めることができた。
国行を返す。飛斬も乗せ奴の腕を切りおとし、更に返す刃で首に斬撃を送るが避けられた。避けた奴に掌が届いた。ゼロ距離から電撃と火弾を放つ。飛びのき奴を見ると、何らかのレジストを続けていたようだが徐々に光り爆ぜた。構えを解かずにしばらく待った。
『討伐です』
ユキの指示した立ち位置の勝利だろう。奴はなにもできなかった。
文字が浮かんだ所に核があり、それを回収したとき転移した。ここが第五階層の出入り口のようだ。ユキの指示に従い、帰還用の転移門を抜けた。
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