第16話 戦闘訓練
──翌朝。
一週間後、クク国へ行くことが決まった。
潜入は機動力重視で俺とレイルの二人で行う。
そのためには留守番のネアとアリシアに強くなってもらう必要がある。
基地の周りには罠が仕掛けてあるが、食料の調達は必ず必要になる。戦いは避けられない。
「一週間でウルフィルに勝てる程度には強くなってもらう。いいね」
「はい!」
「……はい」
「まずは速度だ」
基地の保護と敵襲把握のため、基地から少し離れた広場でスキルを発動する。
『陣形─車掛の陣』
俺を囲むように、みんなを転移させる。
速度に特化した陣形をとることで、俺の身体能力が向上する。
何度か試して分かったが陣形によって、付与される効果が違う。また、効果時間にも差がある。短い陣形は十分で切れるが、八時間続く陣形もあった。
足元の草が俺の足を抑えようと動きをみせる──ネアだ。
意外にも戦闘センスがあり、からめ手で攻めてくる。知能が低い魔物であれば、有利な状況に持ち込めるだろう。
正面にアリシア、三時の方向にネア。まずは決定打のあるネアの動きを止める。地面を蹴りだし瞬間でネアの背後にまわる。
「させません!」
ネアの体が光輝き直視できない。光の正体はアリシア。光を発生させ、照らされた箇所の治療を行えるスキル。光の部分だけを器用に使い、敵の視力を封じる。
「……これでお仕舞い」
身体に木を巻きつかせ、締め上げられる。小型の魔物であれば完全に押さえ込めるだろう。
二人とも速度には対応できるようになったようだ。
「次は力押しだよ」
『陣形─長蛇の陣』
ネア位置を変えずにレイルをネア背後に転移させる。一直線の陣形は、一点突破の超攻撃陣。
身体に巻き付いた木を力ずくで振りほどく。そのままネアの拘束に向かうと、またも光輝くが、顔に巻きついていた木はあえて付けたままにしているので、目をつむれば効果は薄い。
薄目でネアに近寄る。押さえ込もうと草花が絡み付いてくるが、意に介さず手を伸ばしネアを拘束。
残るアリシアも光だけでは止めきれず、あえなく拘束。
「また負けました……」
「……転次郎君ずるい」
「ついにスキルを二回使わされたね。とは言え、どうすればもっと有利に戦えたか考えておいてね。」
「目元についた木を対象にすれば良かったです……」
さっそく反省会をしている。
この調子なら一週間後には大型魔物から逃げるくらいはできるようになりそうだな。
「あんちゃんのスキルってさ、陣形につかった人の量で強さ変わるんだったよね?」
「ああ、だが量より質かな。俺を仲間として信頼してくれている人が陣形に加わると劇的に身体能力が変化するから」
俺のスキルに興味をもち、レイルはよく質問してくる。
「ゴブリンにいたっては転移すらできなかったもんねぇ」
「俺を仲間として認識していないからだろうね」
「クク国から連れてくる人がふえりゃもっと強くなるわけだ、よっカリスマ!」
すぐにおちゃらけるレイルを放っておき、食料調達へ出かける。力不足を痛感中のアリシアがついてくる。
「今日は私も同行します!」
「いいよ、ネアはスキル使ってダウン中だしね。よろしく頼むよ」
ネアのスキル制限に体力消費があるため、連続使用すると猫のようにネアは伸びる。体力もつけてもらわないとな。
「今日は下見も兼ねて、西へ向かおう」
「クク国の方角ですね」
クク国へは西に約八時間あるけば着く。
経路には森があるため、今日は半分の四時間で草木を避け道を作りながら進み、その日の内に基地へ戻る段取りだ。
「ネア、そういえばアレできてる?」
「……テーブル」
伏したまま基地をネアは指さした。
アリシアと基地へ戻り、すぐに目当てのものを見つけた。
「やっぱこれがなきゃね」
「大きい袋ですね……」
「バックパックって言うんだ、何でも入るから便利だよ!」
興奮ぎみにバックパックの説明をアリシアにしたかったが、時間がないので止める。いや、歩きながら説明しよう。そうしよう。
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