第13話 友情コンボ

 あたりに魔物はいない、今のうちにネアとアリシアがスキルに制限をかける。基本的には強く思うだけでいい。ギャンブルで当たりを祈る要領だ。


「できたです。」

「……恐らくできていませんが、スキルは失われていないです」


 ネアは上手くいったが、アリシアはダメだったらしい。ちなみにレイルは過去制限済みだ。


「ネア、頼むよ」

「……はい、です」


 ネアが足元の草に手をあてる。



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『プラント・マスター』

【元の能力】

・近くの植物の成長を早める

・動きをコントロールする。


【制限】

・触れなければならない条件制限

・日中のみの環境制限

・変異させる植物の知識量による出力制限

・体力使用の条件制限


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 元々、十分程度で種から三メートル程度の成長ができる高性能だったが、制限後はどうなるのか。


「……す、凄いです!」


 小指ほどの細長い草が一気に成長し、ものの数秒で二階建てほどの大きさとなり俺たちを覆い隠した。あまりの出力にみんな目を丸くしている。


「よ、よし。これなら魔物に──」


 見つからない、と思った矢先。

 成長を嘲笑うかのように見覚えのある凶器が草を刈り取る。──ソード・マンティスだ。


「くそっ、間に合わなかったか。みんな戦闘体制だ! 打ち合わせ通りやるぞ!」

「アリシアいきます!」


 魔物相手に名乗りをあげアリシアがスキルを放つ。


『聖なる光』


 アリシアから太陽のごとく光が放たれる。名乗りをあげたことで仲間は目を閉じている。ソード・マンティスの目はくらんで、しばらく目は使えない。


「レイル!」


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『穴堀』

【元の能力】

・見える範囲の土を動かし穴をあける

【制限】

・地面に触れる条件制限

・一日五度の回数制限

・使用後トイレに行きたくなる条件制限

・体力使用の条件制限


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 畳み掛けるように、ソード・マンティスの足元に底が見えないほどの大穴があき、鎌を振りながら落ちていく。

 そして、変な制限のお陰でレイルは股間を押さえモジモジしている。

 だがヤツはカマキリ──恐らく飛べる。


『転移』

『穴堀』


 レイルと離れた場所に移動し、レイルのスキルを誰もいない土に使用する。土を消し去るわけではなく、あくまで土を移動するだけの『穴堀』は誰もいない土を、先程の大穴に移動させた。


「見たか! 俺様たちの友情コンボ! あっ」


 武士の情けでレイルの股間を見ることなく、ソード・マンティスが生き埋めになった場所を確認する。


「スキル制限があれば、大型の魔物もなんとか倒せるか」

「……ウルフィル!」


 珍しく大きな声をあげるネア。視線の先には、先日出くわしたウルフィルの姿が──二体。

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