第11話 クロネアの木

「あんなのがいるんじゃ建国は難しいんじゃない?」

「んー、もう少し試してみるよ。レイルたちは基地で待ってて」

「わたしも……一緒に行きたいです……」


 珍しくネアが自分から発言する。


「理由を聞いていい?」

「はいです……探している植物があるんです……外には本で見た植物がたくさんありましたです。だからきっとあるはず」

「なんで探してるの?」

「……わたしのスキルをつかえば、ひとつが大きくなっていっぱいになります。……その植物なら──復讐できます。お母さんを連れていった人たちに……」


 復讐。ネアの見た目には似つかわしくない言葉だが、それを否定するように、ネアの瞳は暗く深い闇に沈んでいく。


「分かった。ただし俺から離れないでくれ」


 先の戦闘で分かったことがある。転移には再発動まで数秒のインターバルがある。仲間を回収してから戻るだとインターバル分のロスが生じる。


「行くよ」


 『転移』


 辺りにはゴブリンの死体が転がっている。首もとにある美しいほどの断面とは逆に、腹部には削られたような傷がある。ソード・マンティスが食い散らかした後だろうか。

 当の本人は満腹になって帰ったってところか。


「川を探そう、水のないところに文明は根づきにくいからね」

「……あっちにあるかもしれません」


 少し先の森から抜きで出た木をネアが指差す。


「……あの少し大きい木は、水がたくさん無い土では育たないです」

「ネアは物知りだね。ひとまずあの木を目指そう」


 頬を赤くしてネアは下を向いた。

 方角的にクク国に近づいてしまうが、背に腹は変えられない。


 道中ゴブリンに出くわしたが、即絶命させることで仲間を呼ばれることなく、目的地についた。


「……クロネアの木……です」

「基地にあった葉っぱも、そんな名前だったね」

「……ネアの名前、お母さんがこの木からとってくれたんです。愛情をいっぱいもらって大きくなれますようにって」


 嬉しそうな反面寂しさを隠しきれないネアは想いにふけっている。邪魔はしないでおこう。


 辺りを観察すると、人とは別の足跡がある。近くに魔物がいる証拠だ。たが水がある証拠にもなる。魔物だって水を飲むハズだからだ。


「……転次郎君、川探しましょう」

「ああ、見える範囲で転移しまくって探すから手を繋いでて」


 視界に写る場所であればイメージ可能なので、移動を省略し捜索できる。先のゴブリン戦でとっさに思い付いたがかなり便利だ。

 5回ほど転移をしただろうかクロネアの木から遠くない場所で川を見つけ。転移できるようにしっかり目に焼き付けておく。


「国の場所は決まったね。だが魔物をどうするか──」

「……転次郎君!」


 オオカミのような魔物が茂みから俺たちを見ている。少し奥では、オオカミ達の頭部ほどの大きさの目が怪しくひかる。

 ソード・マンティスの時にはなかった威圧感が俺たちを襲った。敵わない。本能が逃げろと警告する。

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