壊れかけのレモン・ムーン

月はぼんやりと見えるものだと信じてた

でもそうじゃなかった

今までの世界がおかしなものだったと気づけた

よかった


わからないならわからないで

それでいいじゃないか

それならわかるようになればいいし、

あるいはわからないならわからないなりに進めばいいし

どうして自分がわからないわかってないことをそんなにわかろうとしないのか

わからない


わからなかった

でも今ならわかる

みんな、そんなに自分のことに興味がない


月はぼんやりと見えるものだと信じてた

でもそうじゃなかった

今までの世界がおかしなものだったと気づけた

よかった


人は必ずしも論理では生きていない

人はあくまでも安心を求めているのであって

論理はその補強材に過ぎない

感情的なことは悪ではない

感情を無視するのは、あまりにも良くない


それがわかるようになったのは

ずっと大人になってから

それでも、泣いて怒っている人を

放ったらかしにすることには違和感があった


違和感は大切

どうかそれを押し殺さないで

どうか違和感を押し殺されないで


月はぼんやりと見えるものだと信じてた

でもそうじゃなかった

今までの世界がおかしなものだったと気づけた

よかった


自分の今いる世界が

自分に“合ってる”かどうかは

他の、外の世界を知らなければ

正しさには比較が要る


それを知ることはあまりにも恐ろしく、面倒臭い

でも一旦知ってしまえばもう戻れない

あんなに嫌だった眼鏡もこれはこれで

ただ“戻れない”とはどういうことだろう


ある問題を問題だと捉える力と

自分にとって気に入らない事実を否定する癖は違う

これまで否定されながら育ってきた異常さは

肯定されてみなければわからない


“戻れない”とは

自分のこれまでいた世界が

自分にとって間違っていたと知ること

だけどね 別に“全て”が間違っていたわけじゃないんだよ

それさえわかっていれば

たぶん大丈夫


月が綺麗に見えるとは、素晴らしいことだ

月を綺麗だと感じられることは、

尊いことだ


そう感じられるなら、大丈夫

君はちゃんとやっていける

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