第9話 生徒会へ行こう
ユウが転校してきた日はシー、マミィやヒイとなかなかの強敵とバトルを繰り広げたがなんとか無事に勝つことができた。そして、その翌日のお昼休み、ユウ達は学校の屋上でご飯と食べていた。
「へー、結構見晴らしがいいんだな。遠くに富士山が見えるじゃないか」
「うん、学校の中でも人気スポットなんだよ。風通しもいいし勉強で疲れた頭もスッキリするんだ」
アイは気持ちよさそうに伸びをする。彼女の膝下にはピンク色のお弁当箱があった。ユウは購買で買ったパンを口に入れると、屋上の入り口が勢いよく開かれる。
「ユウ様ー♡、お待たせしましたわ!」
「別に待ってないぞ……ってなんだよその荷物?」
シーは夜逃げ中のサンタクロースのように大きな風呂敷を背中に担いでいた。
「これはユウ様のために銀河財閥の総力を結集して作ったお昼ご飯ですの。銀河財閥の超一流のシェフが愛情を込めて作ったのですわ」
シーが風呂敷を下ろして中を開くとそこには巨大な重箱が何段にも重なっており、中ではご馳走が輝いていた。それを見てヒイが驚きの声をあげる、ちなみにヒイはすっかりユウ達に懐いたようでお昼を一緒に食べていた。
「シー姉すごーい! ねぇ、ボクも食べていいかな」
「ヒイちゃんごめんあそばせ、この料理はユウ様専用ですの。お詫びと言ってはなんですが、ワタクシの手作り弁当を分けてあげますからそれで我慢してくださいまし、あまり美味しくないと思いますけど……」
「普通そっちをユウに渡すべきよね?」
シーは懐から可愛らしい黄色の弁当箱を取り出し、中から卵焼きを摘んでヒイの口の中に入れてあげた。
「シー、悪いがこの量を一人で食べるのは拷問に近いぞ?」
「うふふ、そうおっしゃると思いまして……、実はもう一個準備してますのよ」
「なんでだよ?」
「銀河財閥の教えに好きな男ができたら胃袋を握りつぶせというものがありますの。ワタクシのお弁当でユウ様のお腹をパンクさせますわよ」
「流石は世界三代財閥、貪欲さが尋常じゃないわね」
ユウが巨大なダブル重箱弁当に胃袋をノックアウトされかけていると、ヒイが恥ずかしそうにお弁当を取り出す。
「じ、実はボクもお弁当作ったんだ。初めて作ったからちょっと自信ないんだけど……」
「へー、すごいじゃない。なんだかいい匂いが漂ってきたかも!」
「アイ姉、まだボクお弁当開けてないけど?」
「アイさんはお世辞がお下手ですわね」
「アイは優しくねえな」
「……すみません」
そしてヒイは弁当箱を開けると、おにぎりとミートボール、ウインナー、スパゲティ、ブロッコリーが入っていた。初めてにしてはなかなかなのではないだろうか。ユウは重箱弁当に入っていた鰻の蒲焼きをつまみながら話す。
「皆ちゃんと弁当作ってるとか偉いな」
「ユウは作らないんだ、お母さんとか作ってくれないの?」
アイが尋ねるとユウが悲しい表情をする。
「……母さんは俺が生まれた時に病気でな」
「あっ、その……、ごめん」
「気にするな、今じゃすっかりピンピンしてるからさ。先月から父さんと一緒に世界一周旅行に行ってるんだ」
「ごめん、病気の話必要だった!?」
「必要だぜ、だってその後遺症で俺の母親は一児のママになってしまったんだからな」
「おめでたいことを不穏な言い方しないでよね!?」
悪化にとられているアイを余所に食事を進めるメンバー達。
「そういえばユウ兄はレディパン高校から転校してきたんだよね、どうして転校しちゃったの? 実はボク、レディパン中学にスカウトされてたんで気になるんだ」
「えっ、ヒイちゃんはレディパン中学に行く予定だったの?」
「うん、なんか偉そうな人が招待状を持ってきたんだけど、こっちの方が家が近かったからやめちゃった」
「なるほど、ヒイはエリート生候補だったのか」
「エリート生?」
ヒイが首を傾げるとユウが語り始める。
「レディパン高校は試合で勝つために戦闘力があると思われる人間は中学の頃にスカウトをするんだ。そこで何年も特別なトレーニングを積んだ者は優秀な人間兵器になる」
「ええっ、そうだったの!?」
「確かに昨日のヒイちゃんの能力はかなりのものでしたわね。中学一年生で地球崩壊クラスの災害をおこせるのは滅多にいませんわよ」
「ああ、俺もこの目で見たがヒイの年齢であそこまでできるのはかなりなもんだな」
ユウとシーに褒められてヒイは恥ずかしそうに頬をかいた。
「えへへ、それでもしボクがレディパン中学に入っていたらどうなってたのかな?」
「そうだな、トレーニングをサボらずにちゃんと受けていけば生徒会入りは間違いないだろうな。会長になれるかはライバル次第かな」
「生徒会?」
「ヒイには馴染みがないと思うが、どこの高校にも生徒会ってのがあってそこは戦闘能力が高い人間が入るんだ。そしてその生徒会で一番強いのが生徒会長」
「このフレンドリー学園にも生徒会はありましてよ。ヒイちゃんの入学式で会長の挨拶があったでしょう?」
ヒイは口の中にミートボールをいれてモグモグしながら首を傾げる。
「うーん、あったかなあ?」
「まあ、入学式って気にしない人は気にしないもんね。半年前だし覚えてないのも無理はないよ」
「まあ、その学校で強い奴らの集まりが生徒会だ。四天王みたいな感じと言えばいいのかな」
「おお、それはかっこいいね。ボクもこの学校で生徒会に入れるかな?」
ヒイが綺麗な瞳を期待でキラキラと輝かせていると、シーがお茶を一口飲んだ後に答える。
「それは努力次第ですわね。直接戦った姿を見たことはありませんが、相当な強者という噂ですわよ」
「レディパン高校との戦いに勝って『ざまぁ』するためには生徒会との協力が不可欠だ。機会があれば早めに会っておきたいな」
そう言ってユウが伊勢海老の殻を器用に剥いていると、屋上に一人の少女がやってきた。彼女は白い上着に真紅のスカートの袴姿であり、黒い長い髪をポニーテールにしていた。身長は高めで大人の女性の美しさを持つ少女であった。
「失礼する、ここに椎名優という者がいるとうかがったが分かる者はいるか?」
「はい、俺ですけど?」
「それは都合が良い、拙者は生徒会庶務担当の真剣 菖蒲(シンケン ショウブ)と申す。生徒会長がお呼びだ、ついてきてくれないか?」
ショウブはそう言うとペコリと頭を下げる。
「お姉さんなんだか日本刀を使いそうな名前してるね?」
「……コホン。呼び方はショウブでいい、周りからもそう言われている。他の者も呼び捨てで構わない、拙者も学年は同じ高校二年だ」
「おお、よろしくたのむぜ。ちょうど俺も生徒会に行ってみたいと思っていたところだ是非連れて行ってほしい」
「感謝する」
再度丁寧に頭を下げたショウブ。そして彼女に連れられて生徒会室のドアをくぐる。そこには四人の少女がユウ達を待っていた。
「お前が椎名か、話は聞いてる。昨日付でこの学校に転校してきたようだな、……レディパンチング高校から」
生徒会室に入るなり、黒縁メガネのオカッパのクール系美人が口を開く。彼女の控えめな胸元には『副会長』という名札がついていた。そしてレディパンチング高校という言葉が発せられると部屋内に緊張が走る。それも無理はない、昨年自分達をボコボコにしてきた相手なのだから。
「まーまー落ち着きなさい、ワザワザご足労ありがとねー。ショウブもお疲れ様、座っていいからね」
「御意」
部屋の一番奥の大きな椅子にドッシリと構えている金髪碧眼の少女の巨乳ではち切れそうな制服には『会長』の名札がついている。アイはユウにコッソリ耳打ちをする。
「あの方が生徒会長の隠真木 世界(カクサナキ セカイ)さんよ、セカイさんはハーフだからあの金髪は生まれつきなものなの、墨汁はかけないでね」
「なるほど、忠告たすかる。もし五秒遅かったらかけるとこだったぜ」
「遅いとかそういう問題じゃないと思う……」
ユウが墨汁を懐に戻すのを見てセカイは笑う。
「はっはっはっ、なんだか面白い方達ねー。まあその話は置いといて、ユウくんには伝えたいことがあるんだ。次のバトルロワイヤルの試合のことなんだけどね」
「おお、会長は話が早いな。俺もバトルロワイヤルのことで話したかったんだ。バトロワだが、俺にできることがあればいくらでも手伝うぜ、どんな危険なところでも任せてくれよ。全力でこの学校が勝てるように頑張るつもりだ!」
ユウが自信満々に胸をポンと叩くと、セカイはその美しい白い顔に優しい笑みを浮かべながら言った。
「ユウ、キミは次回の試合は学園指定の特別者として参加しなくていい。家でゆっくり休んでいてくれ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます