TS魔法少女ナツキ 退魔師の能力を受け継ぎTS魔法少女になった少年が、落ちこぼれ退魔師の美少年と想像もしなかったショタおね関係になる話

ぽよひこ

第1話 夏希は妖魔と遭遇するも美少年退魔師に助けられる

竜ヶ崎 夏希(りゅうがさき なつき)は中学生に、なったばかりの少年である。身長163cmの平凡な少年で、4月の誕生日を迎えてすでに13歳になっている。

小学生を卒業間近に告白し、付き合い始めた同い年の恋人の葵を家に送り届けているところである。


「葵が頼んでいた苺のパンケーキ、美味しそうだったなぁ。」


「ええっ?分けたげようかって聞いたのに、いいって言ったのは夏希くんじゃない。欲しかったなら言ってくれたらよかったのに。」


「う、うん。でもあの時点だとその……間接キスになっちゃっうし。」


その言葉を聞いた葵はおかしそうに笑う。


「あははっ、変に意識しすぎだよ。もう恋人なんだから気にすることないのに。」


「う、うん確かに意識しすぎだったかも。で、でもさ、ゴールデンウィーク明けあたりにもう一回食べに行かない?」


「ほほう?次のデートのお誘いは結構自然な感じだったね?うん、行こう!」


 葵の家に着き、ばいばーいと手を振って別れの挨拶をする。こんな日が続くと思っていた。


 それが変わったのは5月に入ってからだ。

単身赴任から一時帰宅した父さんを含めた家族と過ごしたゴールデンウィークも終わり、

1週間ぶりに会えた恋人の葵とのデートの日。


「葵、本当にごめん。まさか月曜日が定休日だったなんて。」


「仕方ないよ。でも代わりに美味しいサンドウィッチに出会えたじゃない。あのフルーツサンドと卵サンド、とっても美味しかったよ。」


「うん、分け易いのが助かる。」


 夏希のリサーチ不足を責めることのない葵が更に好きになった。葵の自宅の近くで2人は手を振ってそれぞれの帰路についた。


 自宅に戻る途中の寂れた道でふと前を見ると、夏希より年下に見える美少年が道の真ん中に立っていた。大きな目を長いまつ毛が飾っており、頬も唇も血色が良く可憐な少女のような美貌だ。

少年は夏希を見ると慌ててさけんだ。


「えっ、人払の術が効かなかった⁉︎

申し訳ありませんがこの辺りは危険です、

すぐに離れてください!」


 高く澄んだ声で少年が叫んだ後、何も無かったはずの空間に黒い何かが現れた。

影絵のような平面の、四足歩行の獣のような姿をした何か。それが2体。


「こんな時に予報より1体多い⁉︎

すみません、僕が食い止めますので逃げてください。」


少年が再度叫ぶ。夏希の母の由紀恵が退魔師をしており、一度見たことがある。


「あれは、欠片の獣?」


「えっ、ご存知なんですか?」


「うん、見たことがあるという程度だけど。君は退魔師な人かな?2体いけそう?」


「苦戦しそうですが何とか……。」


「そっか俺が1体引き付けるから、その間に倒して。」


 夏希は落ちていた石を拾うと、片方の欠片の獣に投げつけた。


 石をぶつけた欠片の獣から視線を感じた夏希は警戒し、獣の動きを見逃すまいと注視する。

目を逸らしたら襲われるかもしれない。


「札よ、この世に在らざる者を討て。」


 夏希が引き付けなかった方の欠片の獣に少年が呪符を飛ばす。獣は呻き声すら上げることなく消え去った。


 夏希は欠片の獣に捕捉されないように、ちょこまかと動きながら快哉をあげる。


「やった、後1体!」


 その時、欠片の獣が滑るような動きで夏希に迫る。それを何とか避けようと後ろに下がる。

それでも追いつかれそうになった夏希は、更に飛び退るが転んでしまった。


(油断した。俺、ここで死ぬのか?)


しかし獣は来なかった。

少年が呪符を飛ばし、それが自分と獣を隔てる壁になっていた。何とか通ろうともがく獣に、追加で飛んできた呪符が当たり獣を消し去っていく。

獣が消滅していくのを見て夏希はようやく警戒を解いた。そこに助けてくれた少年が笑顔で声をかけてくれる。


「大丈夫でしたか?すみません、危険な事に巻き込んでしまいました。」


改めて見た少年は近くで見ると更に美少年で、夏希はその申し訳なさそうな顔に不覚にも少しドキッとした。


「母さんが退魔師だから、君の大変さは少しは分かるつもりだよ。戦いの最中に入ってきて邪魔しちゃってごめんなさい。

凄いんだね、助かったよありがとう。」


「いえ、お兄さんが1体を引き付けてくれたからなんとかなりました。僕は退魔師としては落ちこぼれでして、欠片の獣レベルの相手としか戦えません。たいしたことないのです。」


最初は謙遜かと思った夏希だったが、退魔師の少年の可愛らしい顔が少し悲しげなのをみて、バトル漫画の主人公のようなこの少年にもいろいろあるんだなぁと考えてフォローしておく事にした。


「そんな事ない、君は俺の恩人だ。俺は竜ヶ崎 夏希って言うんだ。よろしく。」


「僕は富川達也です。よろしくお願いします。」


「君のおかげでこの辺りの……えっと何か変な記念碑がある場所の平和が守られたんだ。街の平和を守ってくれたヒーローに、何かお礼させてもらえるかな。」


「ふふっ、確かに謎の記念碑以外何もない場所ですけど。」


クスクスと少年は笑い、話し続ける。


「それにお礼なんてとんでもないです。夏希さんが引き付けてくれたから、2体の欠片の獣にも勝てたんですから。それにもうじき夕食だから家の近くのタツエスーパーでお弁当を買って帰らなきゃ。」


「タツエスーパーでお弁当?意外とご近所さんなんだな。タツエスーパーの弁当は確かに美味しいけど、ウチも近所だから夕食くらいならご馳走出来るぞ。大量に仕込んで冷凍保存しておいたトンカツがあるからおかわりもしてくれていい。」


「トンカツ・・おかわり・・・い、いえでもご迷惑をおかけするわけにはいきませんから。」


そう言って断ろうとした達也だったが、その瞬間彼の腹の虫の音がぎゅるるるると響き渡る。

夏希は吹き出した。


「ははっ、凄い音だな。まあ本当に近くだからさ、お礼をさせてくれないかな?我が竜ヶ崎家では俺が料理担当なんだ。暖かくて普通に食べられる物を出せるからさ。」


あまり固辞するのも悪いと思ったのか、まだ腹の虫が鳴り止まない達也は少し赤い顔で頷いて夏希の後につづくのだった。

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