第6話 11日目/食糧問題
結界に閉じ込められてから、おそらく11日ぐらいが経った。
あの戦闘と怪獣の私に対する治癒行為のあと、私の怪獣対する印象は悪いものでなくなっていた。
もちろん怪獣のせいで結界に一緒に閉じ込められることになったわけだし、怪獣の攻撃のせいで死にかけてもいる。
しかし圧倒的な実力差がある相手にもう一度命を懸けて戦う度胸もないし、もう敵意がなさそうな怪獣と対立するのも無駄なことだ。
何よりこの真っ白で何もない空間でずっと一緒にいるしかないのに、恨みつらみを持ち続けるのも私には辛いし、しんどい。
11日も経ったが未だに眠気がこない。何もすることがないのに惰眠を貪むさぼれないのは残念な気がする。
また空腹も私を襲ってこない。お菓子やアイスで自分に余分な栄養をためている私だが結界内では空腹を感じない。
どうやらこの結界内では睡眠欲や食欲というものが無くなるらしい。一応言っておくと性欲や排泄欲もない。
睡眠も食事も性も何も要らない。何だか一種の完全生命体になった気分だ。
でも、いざ眠ることも食べることも情欲も必要ないとなったら、便利なはずなのに人間性を失ったようで寂しくなるのはどうしてだろう。
そんな私と違ってずっと寝ているのが目の前にいる。怪獣はよく寝る。1日寝て終わるということも珍しくない。
食事については、食べるものが私ぐらいしかないので、私が生きているということは食事をしていないということだろう。現に腹の虫をよく鳴らしている。
他の欲についてはあるようにみえないが、怪獣の生態なんて全く知らないので、元からなのか結界の影響なのか分からない。もしかしたら私が気付いてないだけで本当は存在するのかもしれないし。
怪獣がよく寝ることについては何も問題はない。むしろ気を張る時間が減るので喜ばしい。
でも食事については大きな問題だ。なにせ怪獣にとって食糧になるものが私だけだから。いつ腹の虫に負けて私をペロリとたいらげるのか。
最近は怪獣の腹の虫が聞こえる度に私の寿命が減っていくように感じる始末だ。
この食糧問題、食事については早急に対応しなければならない。
現実世界での食糧危機とか食糧問題なんて、どこか遠い異国どころか違う世界の問題ぐらいの意識だった。食糧が足りないって問題と自分が食糧になるかもしれないっていうのは別ベクトルの食糧問題ではあるわけだけど。
どちらにせよ、必要とするところに食糧を供給する必要があるわけだ。
結界内の食糧問題については、食糧がないのはもちろんのこと、食糧を育てる環境がない。何せこの結界には私と怪獣しかいないのだから。
この結界内が明るいことから光は大丈夫。土や水についても私の魔法でまだ何とかなる。でも肝心な種子がない。種のない土壌に水をあげても意味がない。
でも仮に種子があったとしても問題は解決しない。
まずは収穫までに時間がかかりすぎること。次に収穫できたとしても量が足りるのか。さらに言うならば、そもそも収穫したものを怪獣が食べることが出来るのか分からないことである。
灰色や青や白の毛のモノノケのように傘や葉の傘を使って、植物の成長を早めるような魔法は私には使えない。それに100メートル越えの怪獣の想像できない。象でも1日200キロから300キロは食べるみたいなのに。
あと怪獣って人間とかの肉を食べるイメージがあるのだが、野菜とか果物といった植物を食べるのだろうか。怪獣がベジタリアンやヴィーガンなんて似合わないというか、想像できない。
「とりあえず、土壌だけでも用意しよ」
何もしないよりマシってことで私は土属性の魔法を使って土を用意するのだった
魔法少女と怪獣の結界世界 秋丘光 @akinokisetu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。魔法少女と怪獣の結界世界の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます