第3話 3日目/特徴

 結界に閉じ込められてから、おそらく今日で3日目。おそらく、というのはこの世界では日にちや時間の経過を把握することが困難だからだ。


 なぜなら時計はもちろん、太陽すらこの世界には存在しない。


 ではなぜ3日目とするのか。それは私の感覚がそれぐらいと感じているからだ。だから実際は1日すら1時間も経っていないかもしれないし、1年以上経っているかもしれない。


 でも日付や暦が何の役に立つのだろうか。1人の魔法少女と1体の怪獣しかいないのに。




 これからは何かあれば、こんな感じで日記として記録していくことにした。結界に閉じ込められた訳については、またの機会にプロローグとして書きたそう。


 とりあえず、今はこの結界に閉じ込められてからの、おそらくの3日間の出来事をまとめたいと思う。



 既に書いているとおり、この結界には太陽がない。というより何もない。真っ白な空間に私と例の怪獣しかいない。


 太陽がないのになぜが明るく真っ暗ではないこの結界に来たわけだが、私としては想像とさほどかけ離れてはおらず驚きはしなかった。


 だが私と違い、怪獣はひどく驚いた様子であった。つい先ほどまで建物を踏みつぶし街を消していたわけだから無理もないけれど。


 怪獣のあの驚いた様子は可笑しかった。まるで溺れたかのように短い手足をジタバタとさせ、長い尻尾をグルグルと勢いよく回す。今思い出しても笑いがこみ上げてくるほどだ。


 結界での激しい戦闘がすぐさま始まると思って、私は緊張していたから拍子抜けもいいところだった。



 怪獣がどのくらい驚き溺れていたのかというと、たぶん丸1日。最後のほうは、いい加減私も見飽きていた。


 結界でおよそ1日経った頃、ようやく落ち着いた怪獣は今度は寝始めた。ずっとジタバタして疲れ切ってしまったようだ。今度は短い手足で長い尻尾を抱き枕のように抱きかかえ、尻尾の先を口くわえている。


 私はさらに拍子抜けする。


 私たちの街をいくつも踏みつぶし、魔法少女たちの戦意を喪失させ、人々を恐怖と絶望のなかに落とし悲嘆させた怪獣と同一のものとは到底思えない。


 この安心しきって眠る姿に怒りすら覚える。というか最初から私はこの怪獣に悲しみと怒りしか覚えていない。



 しかしいくら無防備にみえても、むやみに攻撃はしない。感情を抑え込みながら深呼吸をした。


 頼れる仲間の魔法少女はもういない。今は私だけなんだ。どれだけ警戒しても、しすぎるということはないだろう。



 余裕がある今のうち怪獣の弱点がないかを観察した。ひとまず怪獣の特徴をまとめる。


・ブラックキングのような凹凸があり岩のようにゴツゴツした純黒の身体


・ピグモンのように前から垂れる短い手


・エレキングのような長い尻尾


・ジルバコンやパズズのように左右から生える巻いた角


・角にはミクラスのように変わった配色が施してある


・M1号のようなつぶらな瞳にタラコ唇



 ゲームのボスのようなあからさまに弱点と分かるような特徴はない。


 ただ翼がないところをみると、おそらく飛行は出来ないだろう。空中戦というか、頭上からの攻撃は有効かもしれない。しかし地面がなく、宇宙にいるように浮遊するしかないこの結界で、飛行魔法がどれほど通用するのかは未知ではある。



 怪獣が目の前で眠る状態が2日ほど続いているわけだが、私には眠気が一向にこない。休日はついつい半日ほど惰眠を貪るこの私がこの3日寝ていないのだ。


 緊張や不安という要素もゼロではないだろうが、それよりもこの結界が関係しているように思われる。というのもこの結界に来てからというもの身体の調子がすこぶる良い。


 この結界については、張った私も知らないことが多い。


 怪獣と結界について、まだまだ警戒と観察が必要だ。



 この怪獣がいつまで寝ているか分からないが、もう一度観察をした後、戦闘に向けての作戦を練るとする。

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