【KAC20228】終末世界×私だけのヒーロー

帝国城摂政

第1話

 世界は、いつ壊れるか分からない。

 たとえ、平凡で平和な毎日を過ごしていたとしても、次の瞬間には謎のウイルスだったり、敵国さんの謎ミサイルによって、跡形もなく、今の平和が消え去るかもしれない。


 そう、平和ってのは一瞬だった----。


 朝起きて、ご飯を食べて、父親が屁をこくのを笑って嗜めて、学校に行こうと玄関を開けて----



 その瞬間、私の世界は壊れていた。



「なに、これ……」


 緑はなく、岩だらけ。

 空は真っ赤な、血のような禍々しい色に染まっており。

 歩いているのは、生気を失って、ただ歩く人間の姿をした化け物、ゾンビだけ。


 ----地獄。

 目の前に広がるのは、そのような光景だった。


 平穏な私の日々は跡形もなく、それどころか平和を感謝する暇も与えずに。

 ただ冷酷に、現実は残酷だという真実を告げていた。






 私は人を探した。

 振り返ると、家は跡形もなく、ちょっぴり塩気が濃い料理を作る母も、足が臭い父も。

 私が望む平穏は、どこにもなかったからだ。


 誰か、誰か居ないの?


 探していると、真面な、普通の服を着た人が歩いているのが見えた。

 サラリーマンが良く着るスーツ姿、歳は結構上そうに見えるが、この際なんだって良い。

 なにせこのゾンビばかりしか見えなくなった世界で唯一見つけた、自分と同じ人間で----


「ひぃっ!!」


 違った違った違った。

 ただ、スーツの物持ちが良かっただけの、ただのゾンビだった。


 もう嫌。

 どうして私がこんな目に?

 なんで、どうして?


「夢なら、覚めてよ……」


 私がそう言うと、ゾンビ達が急にくるりとこちらを振り向く。


「えっ、なに……今さら、襲うって言うの」


 さっきまで隣を歩いていても、押し退けたりしても、ただ前を向いて歩くだけの、ゾンビ達が?

 私が絶望するのを待っていたと言うの?


「ははっ、笑えて来る」


 そうか、これが私の最期か。


 願わくば、今度生まれ変わる時は、真面な世界でありますように。

 私はそう望んで、目をゆっくりと閉じる。





 でも、終末は訪れなかった。

 目を開けると、大量に斬られて動かなくなったゾンビ達。

 そして、血まみれの刀を持った、血まみれの私。


 地面にはこう書かれていた。


《あなただけは 私が守ります》


「誰よ……もう……」


 ヒーローは私を守り、そして姿もなく消えていた。


 ヒーローなら、直接顔を見せて守りなさいよねバカと。

 私はそう呟く。




 これは、自分を守ってくれたヒーローを探す少女の物語。

 全てが滅んだ世界で自分以外の人間、守ってくれるヒーローを探す物語。

 そのヒーローが、自分のもう1つの人格だと、自分を守るために現れるもう1人の自分だと知らない、少女の物語。

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【KAC20228】終末世界×私だけのヒーロー 帝国城摂政 @Teikoku_Jou

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