森のコロコロ診察室

@nemunemu628628

第1話 メソメソのメソコちゃん

 静かな森の中にある、ハムスター先生の診察室。

 先生のカウンセリングは、とっても不思議。

 そばにいてくれるだけなのに、どんどん引き出されてくる心の声。

 みんな、優しいハムスター先生が大好き。

 ネコさんも、ウサギさんも、かえるさんも…

 ほら、今日も誰か来たみたいですよ。


 キツネさんが、重い足どりで診察室に入って行きました。

「きょうは、どうしたの?」

 ハムスター先生は、やさしい声で話しかけてくれます。

 今日のキツネさんは、どこか元気がありません。

 いつもは、得意げに自慢話をするキツネさんなのに、なにも話してくれません。

「胸の音、聞かせてね。」

 ハムスター先生は聴診器を取り出して、キツネさんの胸の音を静かに聞いています。


 キツネさんは、ハムスター先生のようになりたいと、ずっと頑張ってきたのに、この前のテストでは、あまりいい点数がとれなかったようです。

 すっかり、自信を無くしたキツネさん。

 大好きな先生に診てもらっていると、涙が出てきました。


 ハムスター先生の聴診器が、さっきからずっと同じところから動きません。

 なにか、調子の悪いところが見つかったのでしょうか?

 ハムスター先生は、そっと目を閉じたまま、キツネさんの胸の音を聞いています。


 キツネさんは、不思議な感覚になりました。

『トントン』

 胸の音とはちがう音が聞こえるような気がします。

 遠くのほうで、ハムスター先生の声が聞こえています。

「ダレカイマスカー?」

 不思議なことに、ハムスター先生の心の声が、キツネさんの心の扉をノックして、誰かを探しているようです。

 ハムスター先生の心の声が、キツネさんの心の声を探しています。


 キツネさんは、ハムスター先生が心の中に入ってきてくれたと感じました。

 ずっと我慢していたのに、また、涙が出てきました。

 ハムスター先生は、泣き声の聞こえる扉を、そっと開けました。

「アラ、ソコニイルノハ、メソメソシテル メソコチャンデスカ?」


 ハムスター先生は、寒さで冷えきったメソコちゃんの体をさすってあげています。

 ひととおり泣き終わったはずなのに、また涙が出てきます


「ずっと頑張ってきたのに…」

「点数悪くて悔しい…」

「こんなに自信がなくなって、悲しい…」

「先生みたいになりたいのに…」

 メソコちゃんは、心の奥に閉じ込めていた気持ちを、先生に打ち明けました。

「先生に触れられてるから、温かい…」

 メソコちゃんは、先生の温もりに抱かれて、だんだん眠くなってきました。


「モウ、ダイジョウブダヨ」

 メソコちゃんは、ハムスター先生の優しい声が聞こえたような気がしました。

『zzzzz...』

 そして、メソコちゃんは、そっと眠りにつきました。


 ハムスター先生の不思議なカウンセリングは、心の中の困った気持ち、そう、困ったココロのコビトちゃんを見つけては、そっと眠らせれくれることだったのです。


 ハムスター先生は、キツネさんに話しかけました。

「もう、大丈夫だよ」

 キツネさんは、先生のその一言で、ずっと心の奥にあった不安や焦りが消えていくように感じました。

 今でも、ずっと先生に包まれているような不思議な感覚があります。なんだか、安心できるという感覚に似ています。

 キツネさんは、すっかり元気になり、診察室を出ていきました。


 ハムスター先生は、そんなキツネさんを優しく微笑んで見送りました。

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