第442話 昭和100年ニュートトロブーム

ダイラと栗瑛人が再び集まったのは、夜のスタジオだった。窓の外には星空が広がり、遠くで流星が一筋の光を描いていた。その静寂を破るように、クワヤマダが駆け込んできた。


「ダイラ先輩!聞きました?今、世界中で『ニュートトロ』が話題になってるんですよ!」

彼の興奮した声に、ダイラは湯呑みを手にゆっくりと振り返った。「ニュートトロ?また何かのブームか?」


クワヤマダは大きく頷く。「でも普通のブームじゃないんです。ただのアニメキャラじゃなくて、もっと深い意味があるらしいんです!人間と宇宙の間にいる存在なんだとか。」


その言葉に、栗瑛人が興味を示した。「それ、どこで聞いたんだ?」

「最近、世界中でニュートトロの壁画や彫刻が次々と見つかってるらしいです。形は地域によって違うんですけど、みんなが『見た瞬間に心の中に余白が生まれる』って言うんですよ。」


ダイラは窓際に立ち、星空を眺めながら静かに口を開いた。「余白を生む存在か…。それは、人間が宇宙に挑むこの昭和100年な時代にふさわしいテーマだな。」


世界各地のニュートトロは、固定された姿を持たない。その形は曖昧で、見る者によって異なる解釈を引き出す。ある場所では、巨大な木として彫刻され、別の地域では宙に浮かぶ光のリングとして描かれる。そして、ニュートトロを見た者たちは、口を揃えてこう言うのだ――「不思議な安心感を得たけれど、それが何なのかわからない」。


栗瑛人は自分のノートを取り出し、その中に描いたニュートトロのスケッチを見せた。「俺の中ではこんな感じだ。光だけの存在で、形は定まらないけど、どこか懐かしい感じがするんだ。」


ダイラはそのスケッチを覗き込みながら言った。「曖昧で捉えどころがない…。でも、それが逆に強烈に人の心に残るんだろうな。」


人間と宇宙を繋ぐ“間”の存在


「先輩、ニュートトロって、やっぱり“間”の存在ですよね。」

クワヤマダが湯呑みを置きながら続けた。「昭和のトトロが自然と人間の間を繋いだように、ニュートトロは人間と宇宙を繋ぐ橋渡しなんじゃないですか?」


「その可能性はあるな。」ダイラが答えた。「人間が宇宙に進出することで、地球の安全圏から離れ、未知に向き合うようになる。ニュートトロはその未知に耐えるための象徴かもしれない。」


栗瑛人も頷いた。「宇宙で孤独に旅する人間が、ふと目の前に現れたニュートトロに導かれる。言葉じゃなく感覚で、何かを教えてくれるような存在…。それが未来のトトロなんだろうな。」


ニュートトロブームの行方


その夜、三人は湯呑みを掲げ、静かに乾杯した。ニュートトロは単なるブームではなく、時代が抱える問いそのものだった。自然と人間を繋いだ昭和のトトロ、AIと人間の間を埋めた現代のトトロ、そして未来には宇宙の中で人間を導く存在へと進化していく。


「ニュートトロが語り継がれる未来って、なんだかワクワクしますね。」

クワヤマダの言葉に、ダイラが笑みを浮かべて答えた。「そうだな。だが、俺たちもただ語り継ぐだけじゃつまらない。ニュートトロに負けないくらい、余白を意識したいものだ。」


その言葉に応えるように、栗瑛人も静かに頷いた。ニュートトロが描く未来はまだ未知数だが、彼らはその中に自分たちの物語を刻もうとしていた。

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