第332話 驚異的な脳の脅威

クワヤマダくん:「ダイラ先輩、ふと思ったんですけど、昨日のことが遠い昔のように感じる時もあれば、遠い昔が最近のことのように感じることってありませんか?」


ダイラ:「ああ、クワヤマダくん、それはまさに脳の不思議な働きだな。人間の脳は、時間の経過を単なる連続的な出来事として捉えているんじゃなくて、空間として感じている部分があるんだ。」


クワヤマダくん:「空間として?それってどういうことですか?」


ダイラ:「例えば、子供の頃の記憶って、ものすごく鮮明に覚えていることがあるだろう?あれは、時間が経ったから忘れるって単純なものじゃなく、脳がその時の感情や経験をまるで立体的な空間に収めて保存しているからなんだ。遠い過去と現在を、まるで空間的に近づけたり遠ざけたりしているような感覚だな。」


クワヤマダくん:「そういえば、昔の夏休みってすごく長かった気がするのに、大人になってからの1年ってあっという間ですよね。脳が時間の流れを操作してるってことなんですかね?」


ダイラ:「その通り。脳の中では、時間がただの直線ではなく、経験や感情によってその長さや幅が変わってしまうんだよ。人間の認知能力には、計り知れない力がある。例えば、サヴァン症候群の人々なんか、特定の分野では飛び抜けた記憶力や計算能力を発揮するけど、日常生活には困難を抱えることが多い。」


クワヤマダくん:「そうですね。映画とかでも、桁違いの能力を持つ人が出てきますけど、同時にすごく苦しんでいる描写もありますね。でも、それってどうしてなんでしょう?」


ダイラ:「それは、脳が一部の機能を過剰に発達させることで、他の部分とのバランスが崩れてしまうからだろうな。人間の脳は、驚異的な能力を秘めているけど、その力がどのように発揮されるかは、環境や遺伝などの要因に大きく左右されるんだ。そして、その強力な能力が必ずしも幸福をもたらすわけではないというのが、皮肉なところだよ。」


クワヤマダくん:「なるほど…。じゃあ、僕らが普段感じている不安とかも、脳が勝手に作り出しているものなんですか?」


ダイラ:「そういう面もある。実際、やってみるとあっという間に終わるようなことでも、始める前はものすごく不安に感じることがあるだろう?脳は、不確実性や変化を嫌うから、勝手に不安を作り出して自分を守ろうとするんだ。」


クワヤマダくん:「それ、すごく分かります。大きなプレゼンの前とか、何もかもが怖くて仕方なくなるんですけど、終わってみると『なんだ、あんなに心配することなかったじゃん』って感じることが多いです。」


ダイラ:「それが脳のトリックさ。実は、脳はもっとダイナミックに物事を認識できるんだが、言葉によって不安が生まれることがある。言葉は強力なツールだけど、同時に制約も生む。例えば、『失敗するかもしれない』という言葉を自分に投げかけると、それが実際の行動を抑制してしまうことがある。脳が本来持っている可能性を、言葉が狭めてしまうんだ。」


クワヤマダくん:「うーん…言葉って、便利だと思ってたのに、そんな一面もあるんですね。でも、どうしたらその不安を克服できるんでしょうか?」


ダイラ:「それには、言葉の力を理解して、それを使いこなすことが必要だ。例えば、不安を感じた時に『これはただの脳の反応だ』と自分に言い聞かせることで、少し距離を取ることができるだろう?脳が勝手に作り出す不安から離れ、自分の力を信じるんだ。」


クワヤマダくん:「なるほど。要するに、言葉をうまくコントロールすることで、脳の不安を打ち消すってことですね。」


ダイラ:「その通り。結局、脳は我々にとって最高のツールであり、時には最大の敵にもなる。だけど、その力を理解して使いこなせば、もっと自由になれるんだ。空間としての時間も、そして言葉による不安も、すべて自分次第でどうにでもなるんだよ。」


クワヤマダくん:「ダイラ先輩、深いですね…。時間と空間、不安と脳の力…。でも、何となく希望が持てる話でもありますね。脳が作り出したものなら、きっと乗り越えられるってことですもんね!」


ダイラ:「その通りだ、クワヤマダくん。脳の中には、まだまだ計り知れない可能性が眠っている。その力を解放することで、我々は自分自身の限界を超えていけるんだ。そして、そのプロセス自体が面白い。だから、怖がらずに挑戦し続けることが大切なんだよ。」


クワヤマダくん:「はい!なんだか、今日からさらに積極的に挑戦してみようと思います!」

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