第232話 人間バンジー最高でうま!

「くれ~なずむ町の~」


「最近は、卒業式で贈る言葉を歌う習慣がめっきり減りましたよね。そもそも、若い人たちは知らないよね。仰げば尊し~だって聞かないよ。」


「ですよね。ある送別会で尾崎豊の卒業を歌ったら、子どもたちから笑われたからね。夜の校舎窓ガラス拭いて回ったと替え歌にしたんだけどね。ドン引きだった。」


「昭和の熱量はキモイと一蹴されてしまう時代だ。それと同じように、最後の別れの挨拶で必ず孔子の論語や中国の諺を入れてくる先生もいるよね。」


!バンジージャンプをしたらロープが切れて終わったと思いきや、割と軽傷で保険がおりてラッキーみたいな。」


「「」あれは鉄板だけど、結局どう転んでも何が起こるか分からないという、答えがあるようで無い、もどかしさと逃げの思想を伝えているだけに思える。」


「学生時代うまくいかなかった生徒への慰めの諺として日本中の学校で流行ったよね。自分の座右の銘として、大切にしている人もいそうだわ。」


「実はオレの部屋に、中学校の担任が書いた塞翁が馬の色紙ある。高校受験に落ちたときにもらった。今でも泣けるわ。」


「子曰:“君子和而不同、小人同而不和。→ 子は言いました。「君子は和していても異なり、小人は同じでも和していない。」これ、ドヤ顔で言う先生もいたなぁ。小人はお前だろと生徒たちに突っ込まれるみたいな。授業で孔子のこの字も言わなかった先生ほど、最後、孔子の論語集を使いたがる。図書館から論語の本が消えるんだよね。今はネットで収集できるけど。」


「卒業シーズンになると、やたらと活躍するのが論語だ。中国の諺を使えば、どんな話も深まると思っているのが昭和の教師だ。今頃、チャットGPTに論語を入れた送別文を書かせている輩はたくさんいるだろうね。」


「若者に人気のあるユーチューバーの言葉を使ってみるといいかも。」


「オレたちの挑戦はこれからだ!キングコング西野さんがよく使うフレーズ。」


「確かにあの人が言うと説得力がある。でも、真似できないわ。」


「夢を追う人間は、失敗して当然だ。フィッシャーズのメンバーがよく使うフレーズ。失敗を恐れずに、夢に向かって挑戦するって、冷静に聞くと普通のこと言ってる?」


「一期一会」 - 古くから日本で親しまれている。東海オンエアのメンバー、りょうさんが最近使っていたので注目されたらしい。これも一周回って新しく感じるけど、生徒とろくに話もしない教師が言ったら、イチゴがどうした?で終了だわ。」


「変わりたい気持ちは大切だけど、自分を受け止めることも必要だよ。はじめしゃちょーさんが最近動画で言っていた言葉。送別の際に、変化を恐れずに自分を受け止め、これからも自分らしく生きてほしいというメッセージとして使えるけど、しゃちょーが言ってナンボの言葉だよね。」


「最近の流行言葉やユーチューバーが言った諺を取り入れた送別の言葉も、若い人たちにとっては親しみやすく、励みになるかもしれませんけど、やっぱり、論語の方が無難かも。」



「孔子さんがつぶやいた言葉が、こんなにも日本で重宝されるとは。普遍的で古く感じない言葉は残るんだね。そのうちGPTなんて日もくるんだろうね。」


「もう来てるかもよー。」





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