ギガダイラ

第161話 GIGA②元人材派遣社員の改革

「クワヤマダ子さん、のが日本人の特徴であると結論付けるのは早いよ。」


「そうですよね、200年後の世界はこんなに変わっているのだから、変わるきっかけをつくった人たちがいるはず。」


「明治維新や大正デモクラシーほどの変化ではないけど、日本人の中でも改革派はいたんだ。異端児とは言われたけど、教育の停滞を打破するにはその位のパワーが必要だ。どんな人たちだったと思う?」


「硬直化した公務員の中からは改革は難しいと思うから・・。海外から校長を公募したとか?」


「それも面白い発想だね。ミッション系スクールではそういうこともあり得るけど、公教育では中々難しい。」


「五体不満足のZ武さんが改革したとか?」


「あの人も一時期教師にはなったけど、その後は首相だからね。歴史上の有名人を挙げればいいってもんじゃないよ。彼は教育にはあまり手を出さなかった。教師時代に現場の同僚からいじわるをされたからとか・・。」


「そう言えば、大学の教職課程の授業で日本教育の分岐点として教わった気がする。民間人だったような・・。」


「高度成長期につくられた広告代理店、人材派遣リクルート社の社員だ。」


「ヒト・モノ・カネを動かすプロの人たちですね。」


「フジワラさんという元リクルート社員は民間人初の校長となり、よのなか科という地域に住む職のプロから学ぶプログラムを広め、PTAをぶっ壊した。」


「それがそんなに凄いことなのですか?」


「自ら課題を決めて学びを深めるアクティブラーニングという個別最適化した教育は今では当たり前だが、昔は狭い教室に40人くらい引き詰めて教師が一人で授業をしていた。そのアクティブラーニングの基礎をつくったのがフジワラさん。PTAとは保護者と教師で組織された子どもを支援する組織だったが、地域に協力者を広げ保護者や教師の負担を軽減させた。」


「今では当たり前のことも一昔前は画期的だったのですね。」


「人材派遣会社ならではの発想だ。うだうだ言わずにヒト・モノ・カネを動かせ!という気概は教師には無いからね。視野の範囲が拡大された。もう一人、凄い改革者がいる。その人もリクルートで女性初の民間人校長のリエさんだ。」


「性別で区切る言い方は昭和っぽいですね。」


「リエさんは、令和時代になっても昭和の価値観から抜け出せない現場に爆弾を落としました。」


「過激ですね。もしかして公務員教師を排除したとか?」


「さすがにそこまでではないが、学校内にフリースクールをつくった。」


「それはある意味爆弾ですね。」


「コロナ戦争中、不登校生徒が爆発的に増えた。個別最適化させるべく学校現場は思考停止状態にあった。自宅でタブレット学習もありだからそれでいいのではと・・。」


「確かに自宅で個別学習をすることが最適な子もいますけど、ほとんどの子どもは誰かの助けや協力、導きが無いと厳しいですよね。」


「校内に授業をもたない専任教師をつくり、校内フリースクールの担当者とした。」


「教師集団からの反発は強そう。授業をもたない教師がいてもいいのかと。でも、その教室に行けばいつも同じ先生が待っていてくれる安心感は不登校生徒たちの心を動かしたのですね。」


「リエさんはヒト・モノ・カネを最適に動かしただけですと一言。それで不登校生徒が激減したらしいからね。現場教師はそんなのありなのか!とかなり混乱したみたいだけど。」


「授業をもたない専任をつくることやフリースクールを設置する発想は、やはり人材派遣の発想ですわ。教師は教育という不可思議な呪縛に囚われて自由にコマを動かせなくなっている。」


「木ばかりを観て森が観えない教師の盲点をついた改革だったんだ。」


「視点を変えるって大事なことなんですね。」


「視点を変えた後の行動力でよのなかは動き出すんだ。」



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