第84話 ダイラ物語の謎① ゴーストライター?

「せんぱ~い。このダイラ物語はなぜ始まったのですか?」


「クワヤマダくん、オレもそれがよく分からないんだよ。セルフコラボをやった発電所美術館の最終日に、23年ぶりにこの作者と再会したんだ。数分間、思い出話や世間話をした後に、市川さんの話を書いていいですかと言ってきたんだ。」


「変わった奴ですね。それで、せんぱいはOKしたんですか?」


「うん、いいよ~と一言。でも、こんなに長く連載するものだとは思わなかったよ。だって、オレの個人の情報源はFBだけだから。作者が学生だった頃だって、そんなに個人的な話はしたことがないと思う。ネタは尽きているはず。」


「もしかしたら、この作者は、発電所美術館で再会した奴とは違う奴なんじゃないですか?それか、書いている奴が複数いるとか?」


「そうなんだよね。文章の書き方が、小説調になったり、会話型になったり、ふざけたエッセイ調になったり、一貫性がないんだよ。たまに、題名に①がつくんだけど、②を見たことがない。今回のダイラ物語の謎①とあるけど、②は多分無いよ。」


「雑さの度合いが彫刻科っぽい。複数の彫刻科の人間が執筆している可能性は。」


「小平野外展を開催するにあたって、市役所の人たちがよく言っていたフレーズだ。」


「市川くんのような大型で動く鉄の塊は安全性が担保できないと展示が難しいなぁ。現段階では、展示は無きにしも非ずとしか言えない。ですよね。」


「ないわけではない。ほんの少し可能性がある。言われたオレは燃えたね。マジカルミキサーのタイヤをパンクさせたのも、子どもたちが勝手に動かして、ケガをさせないためだったからね。作品に触ってもケガをしないために、鉄板に空けた複数の穴のバリは徹夜で取ったんだ。後輩の女の子にも手伝ってもらった~いい思い出だわ。」


「若い頃は、反発心を覚えたフレーズでしたよね。この年齢になり、多くの人たちと仕事をするときに、困ったときに使えるフレーズです。たまに乱用します(笑)」


「話は戻すけど、ダイラ物語を複数で書いているとしたら、見え方が変わってくる。発電所で再会した作者は、学生時代、レポート提出でかなり苦労していた記憶があるよ。行もと泣きついてきたこともあったけど、いつも期限ギリギリに体裁の良い文章で提出してきた。」


「それは、ゴーストライターがいる可能性がありますね。」


「彫刻科研究室でも、講評会でコンセプトが全く言えないこの作者が、こんなコンセプチャルなレポートを書くはずがない。怪しいなぁと噂になっていた。」


「ゴーストまで雇って、ダイラ物語を続ける意味はどこにあるのでしょうか。」


「謎だね。ひとつ思い出したことがあるんだけど、大学の卒業展の後の送別会のとき、一人一言ずつ学生たちが話したんだ。そのときに、妙なことを言う奴がいたんだ。」


「その学生は何て言ったんですか。」


「僕はみうらじゅん賞を獲ってもらいたい人がこの中にいます。そのために、いつか何かをしますと・・。みんな、ポカンとした表情だったよ。その頃はみうらじゅん賞なんてマイナーだったからね。確か第7回目で、そこから5年くらい途切れるから、オレも賞の存在を忘れてた。で、その発言をした奴はその後消息不明なんだよ。」


「この作者が時々言うフレーズですよね。気味の悪い話はやめてくださいよ~せんぱ~い!」


「最近、暑いからさ~、たまにはこういう話もいいじゃん!」




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