ヒーローになりたかった少年

らかもち

第1話

昔から、ヒーローになりたかった。

きっかけはテレビで見た戦隊シリーズだったのだと思う。

目をキラキラさせて、テレビの前に張り付く一人の少年。

テレビで見たヒーローのように、自分も誰かを救ってあげたいと願うようになった。


小学生のころまでは、僕は自分の貫いた道を「正しい」と思って疑わなかった。

自分のしたことは「良い」ことだと思っていたし、「悪い」ことだなんて思わなかった。


そんな希望はすぐに消え去ってしまった。




中学生になった。

僕は毎日、クラスのみんなが困っていることはないか気をめぐらしていた。

困ったことがありそうだったら話を聞いたし、実際に手伝ったり、できることならなんでもした。


ある日、僕は教室に呼び出された。



「話ってなに?」



少女が言う。



「もうやめてくれない?」



僕は彼女が何を言っているのか分からなかった。



「......どういう意味?」



「私は別にあなたに助けてもらってほしいなんて言ったわけじゃない。あのくらいのことは自分で解決できたし、むしろ騒ぎを大きくされて迷惑。」



少女は、すごい勢いで僕をまくし立てた。



「もう関わらないでほしい。」



軽蔑する眼差しで、僕を見つめる。



「…僕はただ、君の役に立ちたくて...!」



少女は、少年に言う。



「もう一度言うけれど、。あなたのエゴを押し付けないで。」



そう言われた瞬間、僕はしばらくその場から動けなかった。



自分が過去に助けた人たち。



――—あのとき行った行動は、彼にとって迷惑だったのではないか。僕の価値観の押し付けだったんじゃないだろうか。彼は望んでいたのか。


自分が突っ走ってしまうこともあった。

自分の正義しか考えていなかった。

もう、分からなくなってしまった。


――—――—――—――—――—――—――—――—――—――—――—――—――


最近、私の幼馴染である優斗ゆうとの様子がおかしい。

前のようにクラスメイトの相談に乗ったり、手伝いをすることも無くなった。


何か、魂が抜けてしまったような、別人になったような気がする。



「優斗、今度一緒に遊びに行かない?」



「…ごめん、今はそんな気じゃないんだ。」


昔なら、喜んで一緒に行ってくれていたのに。

本当にどうしてしまったのだろうか。顔色も悪い。



「大丈夫?優斗、顔色悪いよ?」



「…僕は大丈夫だから。放っておいてほしい」



「大丈夫なわけないじゃん。

 どうしたの?最近、学校でも元気ないし、前見たいに―



「黙れ!」



「——―っ?!」



「僕が学校で何もしないのが可笑しいか?普通じゃないか。勝手に僕の気持ちを推し量るな。自分の価値観を押し付けるな。黙っててくれ。」



やめて。



「優…斗?」



「君にとって、僕は何だ?」



「大切な…人。…私…はただ、優斗…を、心配して…。」



少年は、少女に言う。



「もう一度言うけれど、。君のエゴを押し付けないでくれ。」



どうしてそんなこと言うの?



「もう、僕に関わらないでくれ。」


いやだ。


いやだ。


いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ。



そういって、優斗は家の中に入って行ってしまった。

私は、優斗が涙を流しているのを見逃さなかった。



――—――—――—――—――—――—――—――—――—――—――—――—――



「これでよかったんだ・・・・」



僕に失望した美香みかは、これで僕と関わるのをやめる。

そして、僕は、もう傷つかなくていい…。


そう思っていたのに。


ひと月が経った今でも、彼女は僕と一緒にいる。



なぜだ?


なんで毎日、彼女が僕を迎えに来る?

なぜ、そんなに嬉しそうにしている?

なぜ、そんなに助けてくれる?


僕は、君にひどいことを言った。



「私が分からないとでも思った?」



「…何を言ってるか...さっぱり―」



「ちょっと昔話をしようか?」



「むか~しむか~し、あるところに、小さな女の子がいました。

その子はとても人見知りで、臆病で、クラスのみんなに標的にされていました。」



『...いたい…。やめて!どうしてこんなことするの…。』



『うるせぇ!おまえなんかずっと苦しめばいいんだよ!』



みんなから降り注がれる視線。誰も助けちゃくれない。

苦しい。助けて。助けて。助けて。



「そんな時に、一人のヒーローが現れました。」



「ヒー...ロー...?」



「うん。たった一人のヒーロー。」



『ヒーロー見参!やめろ!かわいい女の子をいじめるな!』



ヒー...ロー...?



『うるせぇ!逆らうならお前もこうしてやる!』



「その男の子ははとても強くて、あっという間に倒してしまいました。」



『立てる?』



『う...ん...。』



『もう大丈夫だからね!僕がついてる!』



わたしのヒーロー。



「その女の子の名前は、美香と言いました。」


彼女は微笑みながらこう続けた。


「こんな私を助けてくれたヒーローは、君なんだよ?優斗」



「...う...」



「...うわぁあああああああ」



「そんなに抱きしめたって、私は逃げないよ・・?」



「...ごめん...美香。ごめん。ごめん!」



「大丈夫だよ、優斗」



「…僕は、ひどい人間だから、だから―」



コツン。



「そんなこと言っちゃダメ!」



「...。ごめん。」



「ほんとに、君は謝ってばかりだね?」



美香は、優しい顔をして笑っていた。



「謝るんじゃなくて、ありがとう。でしょ?」



ほんと、彼女には敵いそうにない。



「...ありがとう!僕のヒーロー!」



「よくできました!」



『その後、その女の子は、ずっーーーっと、男の子と幸せに暮らしました』







自分がやってきた行いの中には間違っていることもたくさんある。

僕のエゴや自己満足な場合もあったはずだ。

正義なんていうのは、ある人から見た一定の指標にしかならない。

今回のことで、このことがよくわかった。

でも、きっと必要なことだったのだろう。


だって、これがなかったら僕と美香は結ばれていなかったのだから。






――—――—――—――—――—――—――—――—――—――—――—――—――

ふふ、なんて幸せ何だろう?

私の想定してた計画とは違ったけど、結ばれてよかったわ。

彼女には感謝しなきゃね。





――—――—――—――—――—――—――—――—――—――—――—――—――

あとがき


読んでいただきありがとうございました!

作品を書いたのは初なので、至らない点が多いと思いますが、いろいろな意見いただけるとありがたいです!


フォロー&☆ よければお願いします!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヒーローになりたかった少年 らかもち @Karamochi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ