休みの若返り
シヨゥ
第1話
「やる気が出ないし今日は休むか」
起き抜けでそんなことを言う彼。
「いいんじゃない?」
連日遅くまで働いているのだからたまにはそんな日があってもいいと思う。
「それじゃあ私も休もうかな」
最近ふたりの時間を作れないことにちょっとしたもやもやを抱えていたのだ。丁度いい。
「それならどこかへ行こうか」
家でのんびりするのかと思っていたらそうでもないらしい。
「行こう行こう」
そんな1日を想定していただけに返事が遅れてしまう。
「嫌?」
「そうじゃないそうじゃない。てっきり家でゆっくりするのかと思っていたからさ」
「ひとりだったらそのつもりだったけど、サボりに付き合ってくれるなら楽しみたいなって思って。ここ最近すれ違い気味だったしさ。ふたりの思い出を作りたいなと」
そう言ってスマホを素早く操作すると、
「ここなんてどうだろう。日帰りで帰って来れるし」
温泉地が紹介されたページを見せてきた。
「いいんじゃない」
「それじゃあ決定ということで」
彼が勢いよく起き上がる。心なしかいつもより動きが軽やかだ。
「仕事を休んで日帰り旅行なんて、なんかいけないことをしているみたいでワクワクするね」
「たしかに。クセがつかないようにしないとな」
そう言って笑う彼は子供のようだ。
「職場に連絡を入れたら出発しよう。今日は目一杯楽しむぞ」
明らかに若返った彼になぜだかグッと来た。こんな子供っぽさに惚れたんだ。そんなことを思いだす素敵な1日の始まりだった。
休みの若返り シヨゥ @Shiyoxu
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