序章 少女と術師
悲鳴すら
赤い
(……
彼女を支配しているのは
みんな、
(いや……怖い。だれか、助けて……!)
その時、
はっとして顔をあげた少女の前に、見知らぬ背中が立ちはだかった。黒の
そこからは、一体何が起こったのかよくわからない。軽く気を失っていたのかもしれない。気づけばあの獣は消えており、
「──お
頭上から降ってきた声の
(だれ……?)
視界が
「これ……、
彼の目が自分の胸に
「お嬢ちゃん──いいかい。このことは誰にも言ってはいけないよ。約束できるかい?」
このこと、というのがよくわからなかったが、彼のひどく深刻な様子を見て少女はこくりとまたうなずく。
「……術師さまが
「翠玉……うーんと、まあ、そうかな」
頭をなでてくれる
「すごく、怖かったです……。術師さまが来てくれて、よかった……」
「うん──怖かったね。でももう大丈夫だ。さあ、涙をふいて」
少女の手をそっと取ると、若者はその手に小さな包みを
「そんなに泣いたら、せっかくの美人がもったいないよ。
彼のやわらかな声と
この人が助けてくれた。この人が来てくれたから、自分は生きている。
あの
「それにしても、本当に大した
この人とここで会えたのは、きっと天命だ。この人について行かなければならない。
「……お嫁さまは、いやです」
え、と意外そうな声をあげた若者に、少女は
強くなりたい。怪物が襲ってきても立ち向かえるようになりたい。──この人のように。
「お嫁さまじゃなくて……わたしを、
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