味覚音痴なわたしの魔力使い
森 未来
第1話 黒い服のその男
「今夜は何を出してくれるんだ?」
そんな問いかけに、ふといつものいたずら心が芽を出す。
「体に良いものっていうのは、不味いものでしょ?」
憎まれ口がでてきてしまうのは、あなたが遠い人になっていくのを感じていたからだろう。
✳︎
古い木材を使ったカウンターテーブルの一席に黒一色をまとったその男が座り、一本の魔法瓶をわたしに差し出しす。
本日初めてご来店いただいた、男の近くに座った老齢のご婦人から見た男は「すらっとして、ほどのよい筋肉を持つ黒一色を纏った男」。
おおよそだけれども、それがこの男の第一印象だろう。
集落から少しだけ離れて、ひっそりと存在するこの店には似合わない男、そんな客だ。
差し出された魔法瓶を受け取り、食前酒の葡萄酒と少量のりんごの甘煮を男の前に置く。
その一瞬、ふっと、小さく緩められる口元に今日も安堵する。
くやしいのだけれれど、夕飯時にはまだ少し早い夕方過ぎ、このひとときにわたしの今日の幸せは詰まっている。
男はほぼ1日おきにこの店にやってきては、“本日の夜ご飯定食”を食べて帰る
––わたしの幼馴染だ。
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