S2-FILE031(FILE232):緊急事態だ!?幹部メンバー招集
その日に至るまでに、アデリーンと虎姫はカイルや玲音にクラリティアナ夫妻らと綿密なミーティングを行ない、乱戦になることも想定したため、あえて使わずにいた装備の封を解いたりもしながら備えていた。
当日、決行するにあたって何が起こってもいいように。
「目的を絞ったうえで実現させたなら、いけるんじゃなくて? カイル」
『ああ、互いの無事を祈る……』
自宅地下の秘密基地のモニター越しに、ふたりは微笑んで無事に帰る約束を交わした。
❄️
――そして、2日後。
ヘリックスの本拠地、その中の玉座の間にて。
「ゴッツンコ! ルルルルルルラァァァ――――!!」
「ガァ~~~~~~~~~スッ!!」
「アヲオオオーン」
「ホフゥーッ」
「ツィーン」
「ギュアッキキキキ!」
「ジィーラァー」
「ガーオ……」
単独最強の昆虫ともいわれる、驚異のアリ・ディノポネラを彷彿させるオレンジ色と黒色の怪人。
ミッドナイトブルーの体で、死神のような雰囲気を放つワタリガラスの怪人。
それに付き従う、ダークグレーに染まったコヨーテの怪人。
オレンジゴールドの装甲で全身を覆って我が物顔で叫んでいるのは、ヤシガニの怪人だ。
スカイブルーの体で佇むは、ツメバケイにサーキュレーターの要素を取り入れた怪人である。
ほかにも、真鍮色の体を黒い体毛で覆ったチンパンジーの怪人や、苔むしたような緑色の体を持つシーラカンス型怪人、黄金色に輝くいかついライオン型怪人などがそこに面していた。
「なんだあ、どうしたどうした。みなさんお揃いで」
「
「へえ。そのおバカって、いったい
高い天井が見下ろす玉座の間に招かれた幹部たちが、根も葉もないものも混じった噂話に花を咲かせる中、彼らの元締めたる魔老人・ギルモアがこう一喝する。
「静まれ!」
咳払いをして、下々の幹部たちが沈黙したのを確認したギルモアは本題に移った。
冷たく鋭い目でにらみつけ、更に幹部らを威圧していく。
彼らの傍を固める怪人たちに対してもだ……。
「……諸君に集まってもらったのは、他でもない。わしは今回、
「
大規模な仮装パーティーを不気味に、混沌とした風な様相の中、ワタリガラスやコヨーテの怪人に変身していた2名が元の姿に戻る。
金髪で青黒い上下のジャケットに臙脂色のワイシャツの男性幹部と、同様の服装をした緑の髪の女幹部だ。
「ヘリックスシティに常駐していない我々にもすでに連絡が行き届いていたが、潜伏先でNo.0たちに勘付かれ、まんまと出鼻をくじかれてしまったらしいな。申太彦くんにはガッカリだ」
「なんだとケネスッ。この英国紳士気取りがぁ!!」
「君程度の代わりなんてごまんといるぞ」
申太彦から名を呼ばれた金髪の男は、自身が痛烈な皮肉を浴びせた猿太彦に悪罵され組み付かれるも涼しげだ。
冷たく笑ってさえおり、周りが騒然と、または嘲笑する中で追い討ちをかけられる。
ケネスと親しげな緑髪の女幹部が、これまた皮肉な笑いをうかべ、それとは正反対な焦燥に駆られる申太彦の肩をつかみ、煽ったのだ。
「よしなよ、みっともない。大好きなコーヒーでも飲んで落ち着きな」
緑髪の女幹部は顔を近付け、申太彦の耳元で妖しげにささやく――。
「いつか支部長に返り咲いて、あんたのこと見返してやっからな。ケネス・デル・トーロッ! 【ジェニファー】、お前もだッ」
猿山申太彦は、あらん限りになじられて、じっとしていられるような余裕も寛大さも持ち合わせるような男ではない。
怒り心頭でふたりの幹部に暴力を振るおうとした折、いかつい初老の男性とその妻らしき若い女性が猿山を止めに入る。
この夫婦は猿山にはもう目もくれず、正面の長い階段を登った先に座すギルモアを見上げた。
「バカチンはー、おいといてェー。私とぉー、妻もォー。イターリアからここヘリックスシティまで着任ンー……いたしまーした」
「ケネス、ジェニファー、そんな木っ端の相手なんてしたらあんたたちの名が汚れるだろ? ……我ら夫婦は今までと違い、同じ幹部の仲間たちも、部下の者たちも甘やかしたりなどしません。ヤキを入れていこうと思います」
夫である、サングラスをかけたグレースーツの初老の男こそが【エドガルド・コニーリオ】。
紫の髪に青い瞳、黒い衣装に身を包み不敵に笑っている彼女こそはその妻たる、【キャロリーナ・コニーリオ】だ。
「コワ~…………」
そう呟いたのは、白い帽子に同色のドレス姿の魔性の美女・ジェルヴェゼルだ。
口ではそうは言っていても、その表情は涼しげで怖がってすらいない。
それを見透かしたゆえに、彼女の隣をキープするもう1人の美女、キュイジーネはくすくすと笑った。
「頼もしい限りよな。……猿山、貴様には新たな任務を」
その時、ケイ素で肉体が構成されたこの組織の雑兵・シリコニアンが突然、大慌てで姿を見せる。
これから己が身に振りかかるであろう災難を察して、猿山は頭を抱えた。
「たたた大変です! このシティに侵入者が!!」
「何事じゃ! 曲者が出たのなら、出会え出会えーいッ!!」
重要な話題をしているときになんということだ、と、ギルモアは怒り狂いながら戦闘員たちに指令を出す。
冷徹で狂ったギルモアが唐突に怒号をあげるのは幹部らにとってはいつものことだが、やはり精神的に参ってしまうものが見られた。
「ボサボサするな。……お前も向かうのだ猿山!」
「このオレがですかぁ!?」
猿山への無茶振りがされた。
逆らえば、当然死は免れないし、生き残れたとしても屈辱に塗れる日々が待っている。断れないのだ。
「ほかにだァーれがいーるぅ? お前が犯した失敗、取り戻すぅーチャンスだア。できぬとは、言わせなァーい」
「みーんな、あんたができるオトコかどうか見極めたいんだよ……?」
「やりゃあいいんだろやりゃああああ~~~~~~~~~~~」
コニーリオ夫妻から焚きつけられて、居ても立っても居られない猿山は急に叫んで猛ダッシュで玉座の間を飛び出した。
そのまま、他者から押し付けられる形で侵入者の撃退に向かわされたのである。
「総裁、再生ディスガイストたちを支援に向かわせては……」
「きゃつを甘やかすでないわ。まずは猿山自身のみでどこまでやれるのかを試す、手助けしてやるのはそれからでも遅くはなかろう」
「一理ありますなあ」
ギルモアの狙いはそれだ。
少しだけ身を案じた兜円次の隣で、嘲笑してか親のように見守る姿勢ゆえか、久慈川東郎は笑って締めた。
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