S2-FILE023(FILE224):サルのお顔と秘密基地
「チッ、世話の焼ける……!」
手すりを飛び越えた彼を見て、キュイジーネも飛び降りる――と見せかけ、横の階段から余裕たっぷりに降りていく。
途中で短距離をテレポートして一気に追いつくと、兜や久慈川に並んだ。
「まー、そう逸ることもあるまい。私がやろう」
「あたくしも混ぜて?」
《マンティス!》
《スネェェェェーク!》
それぞれ、剣持を回収していたアデリーンたちの前でジーンスフィアをねじって、電子音声とともに禍々しいオーラに包まれオオカマキリやヘビのような怪人へと変身。
「ギリギリギリギリギリリリ!」
先に攻撃をしかけたのは、銀色を基調とするボディを誇るマンティスガイストだ。
抵抗するロザリアの手をつかみ、まるで共に踊ろうと持ちかけるようにも見えた。
「あまり人の邪魔ばかりするもんではない。ロザリア! 闇のリトル・レディこそ、本当のお前なのだ!」
「あたしはロザリア・スカーレット・ラ・フィーネだ! ほかの誰にもなれない!!」
手放して回したかと思えば、「やむを得まい」と大鎌を装備して斬りかからんとする。
その隣で、スネークガイストと化したキュイジーネが杖を媒介に空間を歪曲させ、アデリーンと蜜月の保護下から強奪。
いともたやすく、剣持桐郎を捕らえてしまった。
「ファファファファ……」
「ケンモチくんを離しなさい! キュイジーネ!」
「ダメよぉ~ダメダメ! あたくしたち、彼に用があるもの」
取り返そうとする2人の追撃を必要最低限の動きでかわし続け、邪魔に思ったら即効で剣持を鎖で縛り付けてどかす。
「いったァ~い。こうやって殴られた感覚も、もう懐かしいわねぇ。蜜月?」
「キュイジーネッ」
そこから、手に持った杖で反撃し、攻撃が当たってしまっても――キュイジーネはわざとらしく痛がって、おまけに笑ってみせたのだ。
目元を覆うサイキッカーが使っていそうなバイザーから覗く、金色の瞳が妖しくも恐ろしい。
「でも、長居は無用ね」
「は、離してくれーッ!?」
緑色を基調とするボディで、下半身には金色の装飾が施されたキュイジーネが2人に回し蹴りをかましてひるませると、剣持を再び捕まえて久慈川と合流する。
「逃がすかよ!!」
「ストラングラービーム」
ヘビをかたどった無数のビームが放たれ、アデリーンたちを拘束。
さながら本物の大蛇のようで、効果が無くなるまでそう簡単には離さない。
「では、ごきげんよう」
その隙にキュイジーネは空間のほころびを作り出し、その中にマンティスガイストや兜を招き撤退したのだ。
「しまった。敵のほうが一枚上手だったわね……」
悔しさをにじませて、アデリーンたちもまた、練馬区を後にした。
◆
ここは都内のどこかに巧妙に隠された、ヘリックスのアジトのうちのひとつだ。
SF風のメカニカルな設備が施された内部は薄暗く、サルの顔のレリーフが飾られ、柱や壁にはサルの紋様が描かれている。
「フン! こんな使えないヤツに、エッジのマテリアルスフィアを渡したと? お前の観察眼も腐ったもんだな」
このアジトの本来の持ち主からの要請を受け、幹部メンバーらが視察も兼ねて訪れていたのだが……その持ち主は不在であり、更に兜の作戦の失敗を受け、黒いテーラードジャケット姿の青髪の男・雲脚が顔を歪ませ剣持へと八つ当たりする。
「うっ……がああ、ぐぐ」
剣持は鎖に縛られた状態で椅子に固定され、心底苦しそうにしている。
「そういきり立つなよ。兜くんは、そうやすやすとしくじる男ではない。それにこの剣持という男の適性も、ずいぶん高いようだしな」
「スフィア自体に手を加えれば。彼も、より性能を引き出すことができる……」
兜は白衣を着た配下の者たちを従え、顕微鏡の前に立って作業を始めていた。
対象は無論、刃物のパワーを宿したマテリアルスフィアだ。
「兜! この僕が任務を引き継いでやるから、お前は引っ込め。灼熱地獄作戦の時のようにな!」
「過去の栄光にすがるクモ男が騒ぎおって。黙って見てろ」
「同意しか出来ませーん。男のヒステリーは、みっともなくてよ――」
ほかにこのアジトに集められていたのは、青白い衣服に身を包んだジェルヴェゼルに、相変わらず赤黒いレザーファッションで決めてきた禍津だ。
あとは、剣持を捕獲して戻ってきたキュイジーネと兜、久慈川である。
ジェルヴェゼルから煽るような笑顔でなだめられた雲脚は、歯を食いしばってますます機嫌を悪くする。
「これをこーして、こーだ……」
同志たちに見られている中、慣れた手付きで一切緊張せず、兜は改造作業の工程を全て終了する。
「完成だあ。クックックッ……!」
怪しく笑う兜がその手にエッジのマテリアルスフィアを持ったとき、ほかの幹部たち5人も注目して驚いた。
「おおお、おれにこれ以上何をしようって言うんだあ!?」
「お前みたいな社会に貢献できんゴミが出来ることといえば、これしかねーだろうが。えぇっ? 剣持さんよぉぉ~~!!」
兜からエッジのスフィアを預かった禍津は、剣持の体に無理矢理埋め込む!
勝手にスフィアが動いてねじれたと同時に、またしても剣持はその身を全身刃物の切り裂き魔へと変えてしまった。
「ハッハッハッハッハッ! お似合いだねぇ〜! まったくもってお似合いだぜ。剣持桐郎ォ~~~~~~~~~~~~~」
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