第12話 ナンパ?
「あ、あの。今おひとりですか?」
二人組の女の子に声を掛けられ、一瞬後ろに人が来たから姉さんと勘違いしそうになった。危ない危ない。
「あぁ、まぁそうだけど…」
この世界の女の子にこうやって話しかけられるのは初めてだったので少し警戒してしまう。見たところ俺とそんなに歳は変わらなさそうだ。
「ほぉ~!お兄さんゲームとか好きなん?それやったらうちのおすすめはなぁ~…」
「もう、六花!そうじゃないでしょ!」
「ごめんごめん。男の人とゲームの話するん初めてやったからちょっと興奮してしもて!」
六花と呼ばれていた子はもう一人の子に注意されつつ、なはは〜と笑いながら平謝りしていた。
「いきなり話しかけてすみません!私は夕立 美織(ゆうだちみおり)といいます。この子は安達六花(あだちりっか)です。」
「どうも~気軽に六花っていうてくれてええよ~。」
「お、おぉ。俺は御門悠だ。これはご丁寧にどうもでいいのかな?」
いきなり現れて名乗られたためこちらもつい名乗ってしまう。
すると二人はおぉと驚いた顔をしたあと、そのまま話はじめた。
「御門さんですね。ふふ。まさかお名前をお聞きできるとは思いませんでした。買い物をしていたら、こんなところに男性がひとりでいたので心配になってつい声をかけさせていただいたんです。不快な思いをさせてしまっていたらすみません。」
と丁寧に謝罪をしてくる夕立さん。
「いきなり女の子二人に絡まれて怖かったかもしれんけど、堪忍やで~。このまま放ってたら御門くんがあれの餌食になるおもたんよ。」
と安達さんがにこにこと笑いながら、奥の方へ指をさす。指をさしたところには二人に対して恨めしそうににらんでいる女性たちが複数組いた。
「え?もしかしてだけど、あの人たち全員が俺のことを?」
「そらそーやろ。男の子だけでも出会えんのに、ただでさえこんなイケメンがひとりでこんなとこおるんやもん。うちも、みおちんおらんかったら同じようになってたかもしれんし。」
六花さんはそういうと、目を細めて舌なめずりをする。そのしぐさに少しドキッとしてしまった。
すぐ、夕立さんにぺしっとしばかれて六花さんはコホンとわざとらしく咳をした。
「まぁそれは置いといて。うちらが声かけた理由はさっき言ったとして、さすがに一人で来てるわけちゃうよね?」
「あぁ、姉さんと来てるんだけど今ちょっと急用で電話しに行ってるんだよね。」
俺はついさっき姉さんと別れてこの電気屋に来たことを説明した。
「なるほど、お連れの方がいるなら安心しました。もしよければなんですが、お姉さんがいらっしゃるまでこちらでご一緒させていただいてもいいですか?いや、あの無理にとは言わないんですが、先ほどの方たちに付きまとわれたりとかそういうことになったらですね、あの御門さんも嫌な気持ちになるかもしれないじゃないですか。だからその、別に私たちが一緒にいたいからとかそういうことじゃなくて」
「はいはい、みおちん。ちょっと落ち着き~。さっきのに絡まれてほしないから、しばらくいさせてほしいなってそういうことやねん。な?みおちん」
夕立さんはコクコクと頷く。
「お、おぉ。えっと、う~ん」
いきなりだったけど、さっきの女の人たちに比べたら安全なのかな?
姉さんもいつ戻ってくるかわからないし、ここはお言葉に甘えておくか。
「じゃぁお願いしてもいいかな?」
二人はよしっとガッツポーズをして、六花さんは後ろを向いて周りの女の人たちをしっしっと追い払っていた。
「ほな、買い物の続きでもしよか!」
こうして二人と一緒に買い物をすることになった。
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