貴方は私だけの憧れ

西沢哲也

第1話

”みんなの憧れヒーローになろう!” 

これは中学のときの学校のスローガンである。今に思えばこんな厨二っぽい馬鹿馬鹿しいスローガンを掲げたなと思うし、生徒会の一員としてそれを実行しようとしていた僕も今になって思えばどうかしているかと思う。

~~

僕は透哉。中学の時は生徒会長として、学校をよくしたいと行動し、校内外ボランティアに参加し、友人の相談にも積極的に乗った。だからこそ多くの人に信頼させみんなの憧れヒーローになっていけたのかなと思っていた。

しかし、生徒会の任期終了が近づいてきたある時、バトミントン部の男子生徒である風見が同部の女子と付き合いたいという相談を受けた。それは、同じクラスで幼馴染の茉莉花だった。

茉莉花は小学校から同じところに通う幼馴染で茶色かかった地毛に名前の由来のジャスミンの花のような華やかで甘い風貌を漂わせた女の子で校内からの人気を集めていた。

一方で誰ともつきあっているといううわさも聞かず、高嶺の花のような雰囲気をにおわせている彼女になんで僕が仲介役をしないといけないのか?

そんな疑問を抱きつつも生徒のお悩み相談の上、自称茉莉花に一番近い僕が、彼女に対し、

「あのさ、誰かと付き合ってみるってことはしないのか?」

と聞いたのであった。


茉莉花は

「うーん、付き合いたい人ならいるよ? いつでも待っているんだけどな~?」

と、にへらと笑みを浮かべると、

「じゃあ、バトミントン部の風見ってやつが茉莉花のこと好きだって言っているんだけど、付き合ってみるのはどうかな?」

と思い切っていってみた。

すると、茉莉花は急に真顔になって

「いや、それはないかな。やっぱり今はだれとも付き合わないわ」

っとバッサリと切り捨てた。


僕は風見に、そのことを伝えると

「やっぱり俺じゃダメか……」

と悲しげに答えて、そのことはもう終わったと思ったのだ。


しかし、次の日、校内の掲示板に

“我らの茉莉花と付き合おうとした輩がいる 風見を許すな”

とそれだけ書いてあるポスターがあった。

えっ? 僕は仰天した。付き合う付き合わないのは個人の勝手だろと思うのに、こんなポスターが許されるはずはないとすぐに撤去をしようとすると、“生徒会長の横暴だ”とか“言論の弾圧だとか”言ってしまえば幼い抵抗なんだろうか、精神的に来る抗議の数々、痴情のもつれが面倒だというのはネットとかで後日見ることになるだが、ある意味純粋無垢な中学生の僕には今までの頑張ってきた数々の事績が今回で音を立てて崩れるようなそんな気がした。

風見はそのあと、体調を崩して、学校に来ることも少なくなり、僕自身も生徒会の任期が終わった後はなんか無気力でぼんやりとした気持ちで、でもこんなところからは恥ずかしくていられないからもう少し遠くの高校に行って今までの生活から逃げ出したい。そんなことを原動力に高校入試に挑んでいったのだ。


~~

高校は家から少し遠く、電車で1時間以上かかる町のある程度優秀な進学校だった。例年、僕のことを知っている中学の人たちもほとんど行かない高校を選び、受験の際も誰にもばれずに行けたと思っていたから、こんな煩わしいこともないだろうと思い、新しい制服をきて、早朝の最寄りの駅へ向かう途中に

「おはようございます。」

と声がかかった。振り返るとなんと、髪を真っ黒に染め上げ三つ編みにし、黒縁眼鏡をかけ中学の時とは似ても似つかない風貌に落ち着いた茉莉花が自分の着ている学校の制服を着てそこに立っていた…… 

「おはよう…… ってどうしてその制服着ているの?」

「えー? それは君と同じ高校に進学したからに決まってるじゃん! 生徒会やめてから急に暗くなって話しかけられないくらい心配しちゃったけど、おんなじ高校でよかった~ ね~これからもよろしくね?」

「いや、茉莉花にも悪いことしちゃったね。無理やり誰かと付き合わせようとしちゃってさ……」

「じゃあさ、お詫びと言ったらなんだけど、私の彼氏になってよ。そうすれば、そんな言い寄られることもないんだろうし、君だってまた、私がいろんな人に告白されているの見るの嫌でしょう? まあ一応、もう言い寄られないようにこんな格好にしてみたんだけどね……?」

「そうだね…… こんな僕でいいなら……」

「こんななんていわないの! 君は私の悪評が立つようなポスターを撤去しようとしたヒーローよ! もう誰も救わなくてもいいけど、私だけの憧れヒーローになってよ」

「……。うん。」

そうやって、実を結ぶのが難しい高嶺の花、茉莉花と付き合うことになったのだ。



~~~~~~

ふふっ…… 成功したわね。

風見君ありがとうね。私に振られて因縁をつけられて精神を崩す演技は透哉に十分伝わっていたようで最高だったわ……


透哉はみんなの憧れヒーローになりたいなんて言っていたど、それであの人には自覚がないんでしょうけどほかの女子にもモテていたのよ。だから、私は気に入らなかったのよ、私だけの透哉よ。ほかの人には渡さない。だから、貴方のヒーロー芯を折るようなことしちゃった☆ 

ちょっと、精神おりすぎて心配になったけど、進学先は親から聞いていたし、透哉のスマホにこっそり入れたバイタルチェックアプリも十分正常だったから問題ないかなって思っていたわ。キャハッ☆

これから、私の隣にいたら釣り合わないとか言い出しそうだから、私は地味子で行こうかしら。うん、それがいいわね。

うん。透哉は私のもの。貴方は私だけの憧れヒーローなのよ。それだけは絶対譲れない


(終?)



~~~~~~~~~

今回はヤンデレなのかよくわからない着地点ですが、許してください……

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貴方は私だけの憧れ 西沢哲也 @hazawanozawawa

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