ごはん日記 レモンうどん 1
@maroho
第1話
玄関で匂いを放っているものに
目をむけないようにして3日経った。
そろそろ箱をあけなければと
思うが
今日も、それをみることはないだろう。
明日香は、眠気覚ましのドリンクを飲みながら、持ち帰ってきた書類を眺め、ため息をついた。
入社してら3年、仕事は任されるようになった
分、仕事量をこなしきれず、持ち帰ることが多くなった。
「残業は、能力不足だから。もっと効率よくこなすやり方を覚えなさい。アドバイスしたいから、今度ランチ行く?」
そう課長の浅沼さんに言われるたびに、
自分の能力の無さに打ちのめされた。
30代前半に課長になり、美意識も高く
医師の旦那と可愛いお子さんもいる、
パーフェクトなあちら側の人間。
何をアドバイス出来ると言うのだろう
こちら側の人間に。。
それにしても、、お腹空いたな。。
昼にパンをかじったきり、何も食べていない
ことに気がついた。
ふと携帯をみると
ばあばからのLINEがあった。
「うどんにかけて食べんさい。
風邪ひかないように、元気で」
3日前から放置してある箱の送り主だ。
ばあばは広島で1人で暮らしている。
子供6人を1人でそだてた肝っ玉母さんで、80を過ぎた今も、小さな小料理屋を営んでいる。
器用で明るくて、コロコロ笑う。
母の代わりに私を育ててくれた人だ。
「LINE見るのずっと忘れてたなあ、。」
たぶんお客さんに送ってもらったであろう
スタンプは
可愛らしいクマが、ニコニコしながら
「頑張ってね」
と言っている
堪えていたものが
堰を切ったようにこみあげてきた
(ばあば。。。)
しばらく止まらなかった。
いいんだ。
子どものように泣いた後
立ち上がった
「レモンうどん食べよう」
玄関にいき、箱を開けた。
柑橘の香りが、鼻をくすぐる。
懐かしい匂い。
決して形はよくないが、黄色い可愛いレモンたち。
ばあばの家の庭にある木がお母さんだ。
毎年、この季節になるとたくさんのレモンたちを実らせる。
そして、ばあばの小料理屋にも、たくさんの
レモン料理がならぶ。
白菜のレモン鍋、レモン豚角煮、レモンの漬物、レモンと鯛の炊き込みご飯、レモンケーキ、、、どれも小さい頃からたくさん食べたものだ。
匂いを嗅ぎながら明日香は小ぶりなレモンを
2つ取り出した。
まな板の上におき、レモンの真ん中に包丁を
入れた。
続く
ごはん日記 レモンうどん 1 @maroho
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ごはん日記 レモンうどん 1の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます