窓からの存在
一色 サラ
第1話
窓の外は晴れていて、緑の芝生の真ん中に、大きな木の葉がユラユラと揺れている。雨の日も風の日も、何かに逆らうこともなく、凛と立っている大きな木。
「夏美ちゃん、体調はどう?」
「うん、大丈夫だよ」
防護服に身を包んだ看護婦が愛想笑いをしている。
「そう、だったらいいけど、何か欲しいものある?」
「オムライスが食べたい。」
「う~んと、それは病気が治ったらね」
「そうっか、分かった。じゃあいいや」
「また来るね」
私の様子を確認して、看護婦は病室を出て行った。
嘘のは分かっていた。16歳になって、大人の嘘が分かってしまう年齢になってしまった。病気なんて、もう治らない。知っている。呼吸が日々、荒くなって、しんだくなっていく。頭の中が脈を打つように、めまいがする。
ママが「ごめんね」と病院に来てくれるたびに言われるのが嫌だった。生まれて来てごめん。パパは、「大丈夫だ。もうすぐ頭の痛いのが治るから」と励ましてれた。それもどこか、嫌だった。だから、2人に会うたび、辛くかった。
窓の外にある大きな木を見ると安心する。外では風に吹いているのだろう。青々と緑の葉を揺らしている。
この大きな木とは、もう1年くらいの付き合いだ。ずっと、そばにいてくれる気がした。特に何かをしてくれるわけでもないど、安心感を与えてくれた。
春から夏は、緑に生い茂て、綺麗だった。秋は赤茶色になって紅葉が楽しめた。冬も茶色の葉っぱに覆われて、1年中、葉っぱは咲き続けていた。毎日のように、目を覚ますと大きな木が確認する。いつも変わらず、そこに居てくれた。
ハァ、ハァァ、ハァ ハァァ ハァァ 呼吸が段々しんどくなってきた。
遠のいていく耳から、人工呼吸器のアラームが鳴り響いていく。
『大丈夫ですか?』
看護婦か、医者の声が聞こえてきた。それもだんだん、聴こえなくなっていく。
少し、窓の外が見えた大きな木だ。私の心を救ってくれるように傍にいてくれた。大きな木は、私の心を救ってくれるヒーローだった。
窓からの存在 一色 サラ @Saku89make
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