第14話 砂漠を歩こう!
剣士のリオに猫人族で女拳闘士のサラ、エルフで弓術士のアンネ、魔法士のドミニク。みんな良いやつだったな。
もう会えないのだろうか。そう考えると、心の奥底から悲しさが湧き上がってくる。
僕は唐突に手を握られる感触を感じる。目を開けると、ミアが僕の手を握っていた。エマとクラリッサも心配そうな顔でこちらを見つめている。
「大丈夫かしら? 悲しそうな顔をしていたけれど」
「悪い。少し感傷に浸ってた」
僕は頬を緩ませて笑顔をつくる。
「無理をしなくていいわ。誰だって身近な人や友達が行方不明になったら悲しいもの。でも、まだ彼らが亡くなったと決まったわけじゃないわ。探しに行きましょ」
「そうだよ。諦めるのはまだ早いと思うよ〜」
「うん。何者かに囚われてる可能性だってある」
「うぅ……。みんなすまない」
「今言うべきなのは謝ることじゃないと思うわよ」
「そうだな。みんなありがとう」
「依頼を受ける覚悟は決まったようだね。それじゃ、よろしく頼むよ」
「分かった。なんとかして彼らを救出してみせる!」
こうして僕らは新たな依頼を受けることとなったのだった。
◆❖◇◇❖◆
「というわけでネイ、ラクダを連れてきてくれ」
「おっけーです。ちょっと待っててください」
僕らは馬小屋にいた。ペレ砂漠は結構広い。なので調査をするには砂漠地帯に特化した移動手段が必要になる。
「ラクダって聞いた事はあるけど、どんな動物なのか知らないや〜」
「だろうな。そもそも、砂漠地帯に行かない限りは乗る機会もないだろうし」
「連れてきやしたー」
ネイが連れてきたのはフタコブラクダだった。
「背中がでこぼこしてる」
「このコブの中には栄養が詰まってるんだ。砂漠だといつ食べ物が食べられるか分からないだろ? だからラクダは食事をした時、余った養分をコブに溜め込むんだ。ちなみにヒトコブラクダってのも居るんだが、こいつはコブがひとつしかない分、フタコブラクダよりも体力はない。まぁ、フタコブラクダも、コブが多い分、瞬発力はヒトコブラクダよりも低いけどな」
「しかもこいつら、水魔法も使えるんで、オアシスがない場所でも活躍してくれますよ」
「なかなかやるな」
「レオンさん」
「なんだ」
「紅蓮の風の皆さんをよろしく頼みます」
ネイは僕に頭を下げた。そう言えば、年齢が近いこともあって、紅蓮の風のメンバーと彼は仲が良かったな。
「任せておけ。必ず僕が彼らの居場所を突き止めてやるから」
「ええ。俺っちは信じています。レオンさんたちや紅蓮の風のみんなが無事に帰ってくることを」
◆❖◇◇❖◆
冒険者ギルドを出てから3日後の朝、僕らはペレ砂漠に足を踏み入れていた。
ザクッザクッ。
ラクダが砂を踏みしめながら進んでいく。
「暑っついわね」
「日差しを遮るものが周囲にないからな。おまけに、今は時期が夏だし」
「定期的に水分補給はしっかり摂らないとね〜」
「塩分も摂るべきだと思う」
「そうだな。一応、塩の塊を持ってきているから、定期的に舐めておいてくれ」
一応全員帽子を被ってはいるものの、それだけでは暑さを防げない。強い日差しによって、空気自体が熱せられているからだ。
ペレ砂漠は基本的に見渡す限り砂地しかない。場所によってはオアシスがあったり、サボテンが群生していたりするが。
「こんなに暑いなんて思ってなかったわ。冒険者たちをしらみ潰しに探していたら、すぐに力尽きてしまうわね」
「お前たちなら、どうやって効率的に捜索をする?」
一応、僕がパーティリーダーだから、パーティの方針を決める権利はある。だけど、彼女たちの意見も聞くべきだろう。
普段から考える習慣がないと、万が一パーティがバラバラになってしまった時、冷静な判断ができなくなる恐れがあるからな。
魔物の
「普通、殆どの冒険者はオアシスがあるところに向かうんじゃないかしら。探索が長引けば、飲み水を補給する必要があるに違いないでしょうし」
「あとは、素材が高値で売れる魔物の出没ポイントとかにも行きそう〜」
「そもそも、砂漠から無事帰って来れるように、冒険者たちの間で、どのルートを探索すれば良いのか共有されてそう」
「ふふ。みんな良いところに気づくじゃないか。さすがだよ」
僕は懐からペレ砂漠の地図を取り出す。
「地図には複数の道が書き込まれているだろ。これらが冒険者たちがよく使うルートだ。他に、いくつかの点に丸く印がついているけど、これらがオアシスや魔物の生息地を示している」
「私たちは、ペレ砂漠の北側から歩いて来たのよね。とすると今はここら辺にいるはず。あら、そろそろ魔物の出没ポイントに入るじゃない」
「ああ、だから気を引き締めていかなきゃな」
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