宵闇怪盗団に花が咲く

月桜 兎

第1話 怪盗団と出会う前

 私は、怪盗団に憧れを持っていた。それがどんな事であれ、一般的に良しとされることかは分からない。けれど、この生活が変わるなら、怪盗団に入りたい。もう、私は頑張れない。家にいたくない。家にいても、疲れるだけの日々なの。

「……もう、ダメだ」

 そう言って、寝ようとする。もう疲れた。

 私は、ルノ・エカバリー。エカバリー公爵家の長女。しかし、公爵令嬢とは思えない扱いを受けている。家族に使用人としての扱いを受けている。私の妹は可愛がられて、縁談もたくさん受けている。しかし、私は社交界に出ていないので、縁談はおろか、お茶会に参加する事も、お茶会をする事もできない。挙句の果てには、使用人すら馬鹿にしてくるよう、公爵からのお触れが出てしまった。私の前でよく言えたと思っているぐらい、虐められている。

 こうなった経緯に理由がある。私が、異能力を使えないから、こうなった。

「私、このままなのかな……」

 外では、貴族として認知されず、家では、使用人として扱われる。ずっと、このままではいやだ。かと言って、私に変える力があるのかと聞かれると、ない。

(悔しいな……)

 私は、あと少しで、追い詰められる。この家を出る可能性があるとしたら、怪盗団と一緒に行くぐらいだ。怪盗団は、貴族の物を盗みにくる。その盗みに来た時がチャンスだ。

(怪盗団は、お宝じゃなくても、盗みにくる時もあるからね)


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「盗むな!返せ!」

「その願いは聞けないな。俺たち捕まえる事ができた時は考えてやる」

 ボンッ!

「逃げられた……」


「余裕だったな」

「次はどこにします?」

「そうだな……。エカバリー公爵家なんてどうだ?」

「「分かりました。仰せのままに」」

「次はどんなの盗めるかな?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る