僕たちの青春時代と生き方

NOTTI

第1話:あの日は帰ってこない

2022年春、康平は同窓会で中学生時代の同級生と久しぶりにオンライン上で会った。


 しかし、その場所にある子たちがいないことに気付く。


 その子は何人かいた。


まず1人目は中学2年生の時に転校してきた奈緒美だ。


 彼女は中学2年生の時に父親の転勤に伴い、同じ中学校に転校してきた。


 しかし、性格はかなりおっとりとしていて、物静かな子だった。


 ただ、彼女はある過去を持っていた。


 それは両親が再婚同士で、6人いるきょうだいは父の連れ子が3人、母の連れ子が3人だが、実は他に父親に5人のきょうだい・母親に3人のきょうだいがいる事も分かったのだ。


 この事を知った彼女は「自分が今後どういう扱いをされるのか?」という不安があったようで、家に帰らず、友達の家を転々としていた。


 そして、彼女が中学校を卒業したと同時に地元を離れ、卒業後の近況が分からない状態になった友人達はかなり心配していた。


 そして、彼女と遊んでいた菜心が「彼女と最近会った」と話したが、詳しくは語らなかった。


 2人目は3年間一緒だった寛人だ。


 彼は先生からも優秀な生徒として認知され、将来を期待されていた。


 しかし、彼は家でも家庭でも期待されすぎた結果、体調を崩し、学校に来られなることもしばしばだった。


 この時、彼は受験したい気持ちとしたくない気持ちが同居し、自分の中で決定することが難しくなっていた。


 当時、彼は塾と習い事と休みなく過ごしていたため、睡眠時間は3時間程度と少なく、毎日低血圧状態で登校していた。


 その後、中学校を卒業した彼は高校に進学したものの、リハビリやカウンセリングを受けながら学校生活を送っていたという話を友人たちから聞いて、彼が心配していた。


 他にも今日は来ていないメンバーが多かったが、彼はたまに連絡を取り合っていたため、そこまで心配はしていなかった。


 同窓会が終わり、それぞれの大学に戻った時のことだった。


 今回参加したメンバーのほとんどは学生結婚をして、すでに子供もいたため、近いうちに遊ぶ話をしていたことを思いだした。


 もちろん、彼も付き合っている彼女がいたが、まだ結婚という話までは至っていなかった。


 その日の夜、彼のスマホが鳴った。


 発信者は“玉名考祐”と出ていたため、彼は一瞬何かやらかしたのかと頭によぎった。


 実は玉名先生は中学校の担任の先生で、中学生の時に進路相談や生徒指導などをしてくれていた先生で、最近も恋愛相談をしたばかりだった。


 おそるおそる電話に出てみると、暗い声で「木下先生が亡くなった」という連絡だった。


 木下先生とは当時問題児だった2年生と3年生が恐れていた生徒指導部長で別名“中学校生徒指導会の重鎮”と言われていた定年間近60歳の先生だった。


 今は65歳だが、今も当時と変わらないオーラで別の中学校で再任用教員をしながら若い先生たちの生徒指導研修でも講師として呼ばれるほどあの強面な表情は顕在だった。


実は3ヶ月前も数人の同級生とオンラインでリモート飲み会をして、愚痴や相談を聞いてもらったばかりだった。


 しかし、先生はこの時すでに体調を崩して入退院を繰り返していたというのだ。


 そして、同窓会にリモートで参加したときにはすでに痩せ細っていて、話すことはかろうじて出来たが、2時間の同窓会に通しで参加することは敵わなかった。


 この話は当時関わっていた子供たちに瞬く間に連絡が行き、先生にお世話になった子供たちが悲しみに暮れていた。


 3日後、先生のお葬式に子供たちが参列し、先生と最後のお別れをした。


 康平は棺に入った先生の顔を見て「相変わらず先生は先生だな」と心で思った。


 なぜなら、棺の中で眠っている先生はまるで「お前らあとは任せたぞ!頑張れ!」と言ってくれているようだった。


 もうあの日には戻れないし、帰ってこない。


 当時を思いながら彼らは未来へと歩いて行った。

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