レモンの涙(しずく)

ももいくれあ

第1話

夏色のワンピースを掛けたまま

秋は冬に追いついた。

谷からの風だけを、思いっきり吸い込んで、

むせていた背中を軽くたたいた。

右足の親指から小指までが、

唯一の味方だった。

気まぐれな虹のせいで、

小さくなったライオンは、

そのスロープに踊らされた。

なだらかで、ゆるやかで、しなやかで、

苦笑いのその道なりに、

いつのまにか辿り着いた。

広げた指の隙間を埋める

水かきだってもっていた。

溢れそうで、こぼれそうで、

そっと静かにころがしてみた。

水玉だらけの向日葵に、

心の汗をかけてみた。

見上げた壁に届きそうな、

思いの全てをぶつけてみた。

水平線から地平線まで、

すっぽり包んでしまうほどの、

強くて優しい手をつないだ。

イルカもクジラも笑ってた。

でも、金魚が欲しかった。

金魚鉢のナマズみたいに、

トゲだらけのリズムだった。

サボテンだって、バラだって、

チクチク細かいトゲがある。

私だって、貴方だって、

トゲの刺さった傷(あと)がある。

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レモンの涙(しずく) ももいくれあ @Kureamomoi

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