田原総一朗VS宇宙の脅威。ちっちぇ地球で争ってんじゃねえ。超絶バトルの開幕~PART3~

小林勤務

第1話 登場

「うう~ん、すんごい景色い~」


 窓から眺めるのは、漆黒の闇に浮かぶ碧すぎるブルー。全てを飲み込むような圧倒的なスケールで地球が迫る。宇宙の神秘ってまさにこれかしら。


 そう。


 ここは――国際宇宙空間ステーション号。


 なんと、わたし、地球を離れてはるばるこんな場所にまで来てしまった。


「こんな場所から地球を眺めてると、わたしの悩みなんて大したことない……よね」


 ぽつりと漏らすわたし。


 実は、時を遡ること1年前。わたしに奇跡が起きました。

 ロト6一等賞。賞金50億円が当たったの。なんでこんなにすごい賞金になったかといえば、全然当たる人いなくてキャリーオバーしすぎた結果、天文学的な金額にまで跳ね上がったってわけ。

 もう、一生遊んで暮らせるでしょ。


 と。


 ウキウキしてたら、案の定お金目当ての冴えない男たちが群がってきて、嫌気がさしちゃったわけ。

 こんなあぶく銭、ぱあーっと宇宙旅行で使い切ってやるわっ!

 てな具合で、地球から家出しちゃいました。


 でも、大金払ってよかったかも。

 こんな素敵で、壮大な景色をひとりじめできたんだし。


 うう~ん、なんだかお金目当てじゃない素敵な出会いがありそう~。


「ヘイ、ミスカクエ。アイラ―ビュう」


 げ。

 カクエって、もしかしないまでも、わたしこと、田中 果久江たなか かくえのことだよね。

 素敵な人とは程遠い、ずいぶんとチャラい感じで声掛けられたし。


「カモ~ン」


 あのさ。なめてもらっちゃ困るわけよ。こう見えて、わたしは早稲田大学第一文学部の弁論サークルの女子人気投票10位だったし。この前のランキングでは11位だったけど、夜、部室に忍び込んで投票用紙に小細工したら、ちょっと順位上がったし。まあ、不正投票ってやつ? そんなの世界中やってるでしょ。


「レッツプレイOK~?」

「ヤチェビャー、リュブリュウ~」

「ウォーアイニ~」

「愛してるよお~」

「ジュテ~ム」

「イヒ、リーベディヒ~」


 色んな言語でああ、しつこい。早く、この場から逃げよっと。

 ふわふわと無重力空間を逆手にとり、うまいこと体を逸らして、さっさと反対方向へと逃げようとした、その時――


 ぶるぶぶるぶるぶるううううううううう


 と、船内全体が小刻みに、かつ激しく揺れ始めた。時を同じくして四方から「おーまーいがっ!」とか、「あすほーるっ!」とか、映画でよくみる絶叫が響き渡った。


 こ、これ、もしかして。


 わたしの嫌な予感は的中。窓から船外の宇宙空間に目を向けると、小さな、といっても大型テレビぐらいのスペースデブリが次々と襲ってきた。こんなのに衝突でもされたら、あっという間にこの船も大破してしまう。


「おーのー!!」


 気が付くと、さっきわたしをナンパした国際色豊かなクルーたちも右往左往するだけ。宇宙空間に孤立した船内では逃げることすらできない。まさに絶体絶命の危機。


 い、イヤ―――っ!!


 目を瞑り、全てを覚悟した次の瞬間。

 もの凄い勢いで、しゅごおおおおおっと地球からロケットがやってきた。そのロケットの窓を蹴破り、一人の宇宙飛行士が暗黒の宇宙空間に飛び出した。

 目にも止まらぬ速さで、次々と襲い掛かるスペースデブリを片手で掴み、たぶん木星の方向にぽいっと投げ捨てた。


 こ、こんな神業ができる人なんて――


 宇宙服から覗く、その雄姿。どこか少年を思わせるボブヘアー。光り輝く銀髪。そして、チャーミングに垂れ下がった目尻。


「あ、あなたは……」


 そう――彼の名は。


「俺か? 田原総一朗だよ」


 と。


 名乗っているように見えた。



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