精霊の里
「エマ、朝だよ。起きて」
私を起こすとする声によって目を覚ます。私を起こそうとしていたのはアレクシアだ。私の上に跨って両手で私の頬を挟んでいる。目の前にアレクシアの顔がある。
「おはようアレクシア」
「おはよう、ちゅっ」
昨日の約束通りアレクシアとおはようのキスをする。アレクシアも私もキスには慣れていないため、少しぎこちない。アレクシアは最初口を窄めて力が入っているが、唇が触れると力を抜いてゆっくりと唇を押し付けてくる。アレクシアが言うには唇が触れるまではちょっと緊張して触れてからは好きって気持ちがいっぱいになるらしい。出会って一週間も経って居ないのにここまで好かれるのはちょっと恥ずかしいけれど凄く嬉しい。
「起きてきたね、おはよう。朝食そろそろ出来るけどもう食べられるかい?」
「おはよう母さん。食べれるよ」
私たちが起きてテントから出ると既に皆起きて朝食の準備をしていた。私が一番後だったらしい。魚を焼いていた。昨日取った魚は全て夕飯に使っていたので新しく取ったのだろう。ずいぶん前から起きていたようだ。
「今日はこのまま精霊の里に行くからね、里では試練があると思うから二人とも頑張るんだよ」
「試練? 聞いてないんだけど? 何やるの?」
「言ってなかったからねえ 毎回違うことをやるから言っても意味ないんだよ」
「何が来てもボクとエマなら大丈夫だよ!」
アレクシアは自信満々な様だ。その自信を私にも分けて欲しい。私は試練と聞いてから少し不安になってきた。精霊の里には魔力の暴走を抑えるために来たのだ。ここで失敗したら大分まずいのではないだろうか。
「エマ、そんなに心配しなくてもいいよ。精霊にはアタシの知り合いもいるからどうにでもなる。……最もエマにはその心配すら必要ないんだけどねえ」
最後声が小さくて聞こえなかったがそれなら安心できる。精霊にヴァレリーさんの知り合いがいるのなら暴走だけでもなんとかしてくれるだろう。
「師匠、洞窟ってあの滝の裏だよね? 道ないよ?」
滝の裏に空間があるのはよく見れば分かるが、そこまで行く方法が無い。滝の横は岩の壁になっていて滝の裏まで行くのは厳しそうだ。行く方法があるとすれば、
「エマ、よろしく」
「やっぱそうなるんだね」
私が錬金術で道を作れということだろう。私は今いる場所と滝の裏を階段でつなぐ。作ること自体は楽だけど大きい分魔力を消費するから疲れる。
私たちは階段を上って滝の裏まで来た。滝を裏から見たことは無い、少しスリルがある。流れ落ちる水流を通して木々が見える不思議な景色だ。こうして見ていると時間が経つのを忘れそうになる。
「エマ、アレクシア、行くよ」
「あ、うん」
「は~い」
アレクシアも見とれていたようだ。二人一緒に滝の魅力に囚われえていた。私達は笑いあって洞窟の方を向く。奥の方には光が見えている。そこまで長い洞窟ではなくトンネル見たいな感じだ。シュラはもう洞窟の中を進んでいる。私達も急いでその後を追った。
洞窟を抜けると、そこはさっきまでいた森に似ているが、雰囲気がだいぶ違って、木漏れ日に照らされた幻想的な場所が広がっていた。心地よい風が吹き、透き通った川が流れている。少し開けた場所にはお寺の様な建物がある。
「汝ら、ここに何の用じゃ」
「わっ」
いきなり目の前に老人が現れた。白い髪の毛と髭、着ている服も真っ白だ。
「長老、アタシだよ」
「おお、リディアーヌの弟子か。何しに来たのじゃ?」
この老人は精霊の里の長老でヴァレリーさんとも面識があるらしい。ヴァレリーさんが言っていた知り合いはこの人か。真っ白だから幽霊かと思った。
「それで今日は何をしに来たんじゃ。この娘達が関係あるのか?」
「そうだ、こいつは弟子のアレクシア。それでこっちが娘のエマ。それぞれ光と闇の魔力を持っているから精霊と契約させたいんだ」
「魔力の暴走を抑える為か、では試験を受けてもらうかのう。その娘の方も本当にやるのか?」
「ああ、頼む」
なぜか私だけ試験を受けるか確認された。何故だろう。
「アレクシアとエマじゃったか。こちらへ付いてまいれ」
ヴァレリーさんとグレース、シュラは試練に同行できないため、ここで一旦別行動になる。私達は言われた通りに長老に付いていく。辺りを見回すと、少し離れたところから誰かがこちらを覗いているのに気付いた。他の精霊だろうか。
「見て、人間よ」
「何でここにいるんだ?」
「長老と一緒にいるから多分試験じゃない?」
こちらを覗いている精霊達は珍しいものを見るような反応をしている。精霊の里に人間が来ることは少ないのだろう。森の中に会って入り口も分かりづらい場所に隠れて暮らしているからだろうか。
「ここじゃ」
連れてこられたのはさっき見たお寺の様な場所だ。結構広い。ここで何をするのだろうか。
「まず試験について説明しようかのう。試験は数回に分けて行う。具体的な回数は無い。汝らが精霊と契約するに相応しいと分かった時点で終了だ。一つ目の試験を終えたら次の試験を始める前に一日開ける。体を休めるなり里の精霊たちと交流するなり好きにするが良い」
「試験は一回で終わる可能性もあるってこと?」
「そうじゃの。じゃが、一回で合格した者はおらん。一回で終ったことがある者は不合格で帰らせた奴らだけじゃ」
試験には即不合格の場合があるらしい。最初から最後まで気は抜けない。
「合格した人は大体何回で合格したの?」
「大体3回位じゃの、多くても7回もあれば大体の者は合格しておる」
「そう、分かった」
「うむ、アレクシアの方は大丈夫かの? 質問はないのか?」
そういえばさっきからアレクシア静かだな。どうしたんだろう。
「あ、うん。大丈夫だよおじいちゃん」
「おじいちゃん?」
「うん、おじいちゃん。だめかな?」
「好きに呼ぶがよい。ワシらに名前は無いからのう」
急に読んだからびっくりした。見た目からしたらおじいちゃんだからそう呼んだのだろう。私もそう呼ぼうかな、名前が無いと不便だし。
「アレクシア静かだけどどうしたの?」
「凄い奇麗な場所だから見てたの」
「そっか、確かに綺麗だよね」
寺からの景色も奇麗で本当に居心地が良い。ここに住みたいと思えるような場所だ。
「さて、最初の試練を始めようかのう」
早速試験が始まるようだ、少し緊張しつつ試験の内容を聞く。
「最初の試験はここで生活することじゃ。二人で協力してもよい。料理、掃除、裁縫、洗濯など、あらゆることを自分たちだけでやってもらう。道具や食材はこちらで用意するから安心するとよい。ただし今から精霊を呼んできてそいつも一緒に住まわせる。そやつとも協力してもよい、共同生活が最初の試験じゃ」
「そ。それって」
花嫁修業するの!?
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