K君が命を絶ったのを僕は人づてに聞いた。

本当のところは本人にしかわからないのだろうが、彼は再婚した両親からひどい仕打ちをされていたようだ。

再婚相手との間に生まれた年の離れた弟を両親はかわいがっていたのだという。

働いた給料はそのほとんどを奪われ、両親の借金返済も一人でしていたらしい。

K君は自殺の中でも一番苦しいといわれる方法で命を絶った。

彼なりの訴えだったのだろうか。


あの心優しいK君が誰にも相談することなく命を絶った。

すごく仲良かったわけでもない。彼の走馬灯には僕は出てこなかったと思う。

ただ、彼が死を選択したことで、僕はなんだかむなしい気持ちになった。悲しくなった。

皮肉にも彼が死んでから、彼のことをよく考えるようになった。


間違いなく彼の死は周りの誰かの意識を変えた。


何がどう変わったのかはわからない。

ただ僕は彼の分も一生懸命に生きようと思う。

偽善なのか、一時の感情なのかわからないが、今はそう思っている。


K君、いつか僕がそっちにいったときには、あの頃みたいに笑いあおうね。


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救えなかった人 @ren9119

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