『俺、おっぱい!』②

「なぁ聞いてくれよ」


「……なんだ?」


「昨日さ、妹に弁当作ってくれないかって頼んだんだ」


「ほう」


「んで、今日も作ってきてくれたんだ」


「……よかったな」


「ああ、だけどな……」


「……どうした?」


「中身がハンバーグだったんだ」


「……」


「めっちゃ美味かった」


「……」


「……」


「……喧嘩売ってんの?」


「……そうかもな。美味しかったしな」


とても優しい親友は――俺を当然膿のように殴った。痛かった。


***


 ――夜。


「はいこれ! 私が作った特製ハンバーグだよ! 隠し味も入ってる!」


「……どう見ても肉団子にしか見えないんですけど?」


「違うもん! ハンバーグ!」


「ふーん……それじゃあいただきます」


パクッと一口食べる。すると中からチーズが出てきた。


「おっ! こりゃ美味いな!」


「でしょ!?」


得意気に胸を張る妹。俺はそれを褒めながら、『チーズ in 肉団子』を次々と食べ進めていった。


「ごちそうさま。いやーうまかった」


「えへへ♪ そう言ってもらえると嬉しいよ」


「ところで隠し味ってのは何なんだ?」


「それはまだ秘密っ! 当ててみて!」


楽しそうに言う妹。うーむ……なんだろう? チーズが入っていたのは間違いないと思うのだが……。とりあえず考えてみるか。………………


「よし、わかったぞ!」


「ほんとに!? すごい! 教えて!」


「ズバリ答えは!」


「うんうん」


「トマトケチャップ!」


「ブッブー。正解はタバスコでした」


「ちくしょう!! 騙された!!」


「あははっ! 引っかかったねお兄ちゃん!」


イタズラ成功といった感じに笑う妹。くそ……てかタバスコ? そんなもの入ってたのか?全然気づかなかったわ。辛くなかったし。


「ちなみにタバスコの他に何が入っていたのか分かる?」


「他にもあったのか。えっと……唐辛子とか?」


「残念! 正解は生姜っ!」


「マジか! すげぇな!」


「えへへ♪ 頑張って作った甲斐があったよ」


なんか全部スパイスな気がするが……辛くなかったしまあいいや。それにしてもこの子は本当に料理が上手だなぁ。将来は良いお嫁さんになれることだろう。


「あ、そうだ。ちょっと待っててくれ」


「うん? いいけど……」


キッチンに向かい、冷蔵庫を開ける。そしてその中からあるものを取り出し、リビングに戻った。


「ほれ」


「えっ?」


キョトンとする妹に、手に持っていたものを放る。


「わぷっ……これは?」


「プリン」


「どうして?」


「お礼」


「お兄ちゃんが?」


「ああ、まあお前の手作り料理には劣るかもしれないがな」


「ありがとう! お兄ちゃん、大事にするよ」


「おい今食べてくれよ」


「えへへ……だって勿体無いじゃん」


「はぁ……まったく」


そう言って笑い合う俺達。その光景はとても幸せそうに見えた。


「ねぇお兄ちゃん」


「ん?」


「明日もまたお弁当作るね」


「まじか!? 楽しみにしてるよ」


「うん! 任せて!」


とても嬉しそうな妹。その姿を見ると、自然と笑みがこぼれてくる。


――俺は今、とても満たされている。だから願わくば、いつまでもこんな時間が続けばいいと、そう思った。

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