あるいはキミの瞼のウラに
星色輝吏っ💤
プロローグ
キミはいつも、未来が分かると言う。
見えるのではなく、分かるのだ、と言った。
何も考えなくても、頭の中に未来が、文字として浮かび上がるのだそうだ。
それから、何とも気味の悪い能力だ、とも言った。
「キミの瞼のウラには何が見えてるんだろ」
特に意味を考えたわけでもなく、ぼそっと僕がつぶやくと、キミは何もかもを悟ったように顔を伏せた。
「何もないよ……。見えているのは現実だけだから」
「いや、そうじゃなくて……」
瞳に映るのは、今ここにいる現実だけだ、と、そう言っているのだろうか。それは当たり前だ。僕だってそうだ。僕が聞いたのは、キミの瞼のウラに在るもの。存在しているもの。
しかしキミは、表情を何一つ変えなかった。
「分かってるよ。私が目をつぶったら、未来がわかる。けれど、本当に何もないの。目の前の何かしか見えない。特別凄い能力ってわけでもない。それに、良いか悪いかで言ったら言ったら、悪い能力よ」
僕はキミがそんな風に言う理由がわからなかった。未来がわかったら、いろんなことができるだろうに。楽しいこと、うれしいこと、やれることの幅が広がるだろうに。どうしてキミは、そうポジティブに考えられないのだろう。
キミは、この世界の一つの真理に気づいてしまったかのような、喜びや楽しみのない、比喩ではなくて本当に今自殺してしまうのではないかと言うほどに、人生がつまらないと思っていそうな雰囲気を僕に感じ取らせた。
それは間違っていたのかもしれない。
なぜなら実際、このあとキミは自殺なんてしない。
する気なんてさらさらなかったはずだ。
しかしキミが醸し出す覇気というか、オーラと言うか、何か神秘的な暗闇が僕に訴えかけてくる気がするんだ。言葉では言い表しにくいが、曖昧な感覚が、僕を襲った。
キミには、真っ黒な妖怪のような何かが憑いているように感じた。
キミの瞳の奥には、ちゃんと光が在るのだろうか。
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